マイナ保険証を基本とする仕組みに移行し、在宅医療の現場でも、訪問先でのオンライン資格確認や電子処方箋への対応が避けて通れなくなりました。一方で、令和8年度診療報酬改定では医療DX関連の加算が大きく組み替えられ、「医療DX推進体制整備加算はどうなったのか」「在宅の加算は届出し直しが必要か」と迷っている方も多いと思います。この記事では、訪問診療を行う医療機関と訪問看護ステーションの事務・管理者の方に向けて、居宅同意取得型オンライン資格確認の流れと、令和8年6月以降の加算の扱いを、告示・通知・疑義解釈に基づいて整理します。
この記事でわかること
- マイナ保険証・資格確認書をめぐる現在の状況
- 訪問診療・訪問看護で使う「居宅同意取得型」オンライン資格確認の手順
- 在宅で電子処方箋に対応するときに押さえる点
- 令和8年度改定後の電子的診療情報連携体制整備加算・在宅医療DX情報活用加算・訪問看護医療DX情報活用加算
- 導入と算定を確実にするためのチェックリスト
在宅医療で押さえる医療DXの全体像
厚生労働省の国民向けページでは、従来の健康保険証は2024年12月2日以降新たに発行されなくなり、その有効期限は2025年12月1日で終了したと案内されています。マイナ保険証を持っていない人などには、当分の間、申請によらず「資格確認書」が交付されます。2025年9月19日からは、環境が整った医療機関・薬局で順次スマートフォンをマイナ保険証として使えるようになり、マイナンバーカードの電子証明書が切れても、期限切れから3か月間は健康保険証として利用できるとされています。
在宅医療の事務で関係する仕組みは、主に次の三つです。
| 仕組み | 在宅医療での使いどころ | 関連する評価 |
|---|---|---|
| オンライン資格確認(居宅同意取得型を含む) | 訪問先でマイナンバーカードによる本人確認・資格確認を行い、同意を得て薬剤情報・診療情報・特定健診等情報を取得する | 在宅医療DX情報活用加算、訪問看護医療DX情報活用加算など |
| 電子処方箋(電子処方箋管理サービス) | 処方情報・調剤情報を登録し、重複投薬等のチェックや他院の処方の参照に使う | 在宅医療DX情報活用加算1、電子的診療情報連携体制整備加算1・2 |
| 電子カルテ情報共有サービス | 国が提供する仕組みで診療情報を共有する | 施設基準上の要件(当面は満たしているものとみなす扱いあり) |
居宅同意取得型オンライン資格確認の流れ
外来では顔認証付きカードリーダーで受付をしますが、訪問診療や訪問看護では患者宅にその機器はありません。そこで用意されたのが「居宅同意取得型」のオンライン資格確認です。社会保障審議会医療保険部会(令和5年9月29日)の資料では、仕組みと手順が次のように示されています。
- 初回訪問時に、医療関係者が持参したモバイル端末(スマートフォンやタブレット等)から、Webサービス「マイナ在宅受付Web」にアクセスする。
- 患者が、診療情報・薬剤情報・特定健診情報等の提供に同意するかどうかを画面で選ぶ。
- 端末のマイナポータルアプリで、患者が4桁の暗証番号を入力し、マイナンバーカードをかざして本人確認を行う(初回のみ)。
- 同意情報が登録され、資格情報が取得される。医療機関等は資格確認端末から資格情報や薬剤情報等を取得して確認する。
- 2回目以降は、医療機関等との継続的な関係のもとで訪問診療等が行われている間、医療機関側で「再照会」により最新の資格情報を取得し、薬剤情報等は初回の同意に基づいて取得できる。
同じ資料では、往診では訪問の都度、資格確認と同意取得を行う必要があるとされています。定期的な訪問診療と、臨時の往診とでは扱いが異なる点に注意してください。また、訪問看護ステーションについては、厚生労働省の医療機関等向けページで、令和6年6月(請求は7月請求分)からオンライン請求とオンライン資格確認を開始し、保険証の廃止時期(令和6年12月2日)からオンライン請求とオンライン資格確認が義務化された(やむを得ない事情がある場合の期限付きの経過措置あり)と説明されています。
現場での運用のコツは、初回訪問の持ち物と手順を固定することです。モバイル端末の充電、マイナポータルアプリの準備、患者が暗証番号を覚えていない場合や読み取りがうまくいかない場合の事業所としての対応をあらかじめ決め、訪問した職員が「同意の取得まで完了したか」を記録に残すようにしておくと、後の加算算定の確認が楽になります。
電子処方箋を在宅で使うときのポイント
電子処方箋は、処方・調剤の情報を電子処方箋管理サービスに登録し、複数の医療機関・薬局で直近の処方・調剤情報を参照したり、重複投薬等のチェックに使ったりする仕組みです。厚生労働省のページによると、院内処方の情報を登録する機能(院内処方等情報登録機能)は令和7年1月23日に始まっています。
令和8年度改定の疑義解釈(その4)では、施設基準にいう「電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制」について、次のように示されています。
- 院外処方の場合:原則として、電子処方箋を発行するか、引換番号が印字された紙の処方箋を発行して処方情報を登録していること。
- 院内処方の場合:原則として、医療機関内で調剤した薬剤の情報を電子処方箋管理サービスに登録していること。
訪問診療では、処方箋を薬局へ送る、患者宅に届けるなど運用が外来と異なります。電子処方箋の場合は引換番号の伝え方、紙の場合は引換番号付きで出力されているかを、処方の流れに沿って確認しておきましょう。電子的診療情報連携体制整備加算については、疑義解釈(その7)で、原則として処方を行う医師全員が電子処方箋を発行できること、ただし当面の間は常勤医師2名以上(常勤医師が1名のみの場合は1名以上)が発行できればよいことも示されています。非常勤医師が訪問診療を担当する場合は、その医師の処方の流れも確認が必要です。
令和8年度改定:医療DX関連の加算はどう変わったか
令和8年度改定の個別改定項目では、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算を廃止し、初診料・再診料・外来診療料・入院料の加算として「電子的診療情報連携体制整備加算」を新設する方針が示されました。告示(令和8年厚生労働省告示第69号)で確認できる、在宅医療に関係する主な点数は次のとおりです(令和8年6月以降)。
| 加算 | 付く項目 | 点数・金額 | 算定回数 |
|---|---|---|---|
| 電子的診療情報連携体制整備加算1/2/3 | 初診料(注16) | 15点/9点/4点 | 月1回 |
| 電子的診療情報連携体制整備加算 | 再診料(注19) | 2点 | 月1回 |
| 在宅医療DX情報活用加算1/2 | 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(注13)、訪問診療料(Ⅱ)(準用)、在宅がん医療総合診療料(注8) | 11点/9点 | 月1回 |
| 訪問看護医療DX情報活用加算(医療機関) | 在宅患者訪問看護・指導料(注17)、同一建物居住者訪問看護・指導料(準用)、精神科訪問看護・指導料(注18) | 5点 | 月1回 |
| 訪問看護医療DX情報活用加算(ステーション) | 訪問看護管理療養費(注13) | 50円 | 月1回 |
電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合は、令和8年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算などを届け出ていた医療機関も改めて届出が必要とされています(疑義解釈その1)。また、初診料の加算を算定した月に再診を行っても再診料の加算は算定できず、その逆も同様です(疑義解釈その4)。
同じ月に重ねて算定できない組み合わせ
在宅医療DX情報活用加算は、電子的診療情報連携体制整備加算(初診料・再診料・外来診療料)、在宅がん医療総合診療料の在宅医療DX情報活用加算、訪問看護医療DX情報活用加算(医療機関の在宅患者訪問看護・指導料等・精神科訪問看護・指導料)のいずれかを算定した月は算定できません。外来と訪問診療が同じ月に混在する患者、自院の看護師が訪問している患者では、月に一つだけになるよう、どれを算定するかのルールを院内で決めておく必要があります。
たとえば、月の前半は外来に通い、後半から訪問診療に切り替わった患者を考えます。外来の再診時に電子的診療情報連携体制整備加算を算定すると、その月は訪問診療で在宅医療DX情報活用加算を算定できません。逆に、訪問診療の計画作成に居宅同意取得型で得た情報を活用していて在宅医療DX情報活用加算を算定するつもりなら、外来側では算定しない、という判断になります。レセプト作成時に初めて気づくと修正の手間が大きいので、訪問診療の開始が決まった時点で、その月にどちらを算定するかを医事担当が決めておくと混乱が起きにくくなります。
施設基準の比較と算定の注意点
各加算の施設基準(特掲診療料・基本診療料の施設基準通知、訪問看護ステーションの届出通知)を、在宅に関係する範囲で比較すると次のようになります。
| 主な要件 | 在宅医療DX情報活用加算1 | 同 加算2 | 訪問看護医療DX情報活用加算(医療機関・ステーション) |
|---|---|---|---|
| オンライン請求を行っている | 必要 | 必要 | 必要 |
| オンライン資格確認の体制 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 居宅同意取得型で診療情報等を取得・活用できる体制 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 電子処方箋の発行又は調剤情報の登録体制 | 必要 | 不要 | - |
| 電子カルテ情報共有サービスを活用する体制 | 必要(当面はみなし) | 必要(当面はみなし) | - |
| 医療DXの取組の院内掲示 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 掲示事項のウェブサイト掲載 | 原則必要 | 原則必要 | 原則必要 |
| 届出様式 | 特掲診療料施設基準通知 様式11の6 | 医療機関:様式20の3の4/ステーション:別紙様式10 | |
電子カルテ情報共有サービスの要件は、令和8年度改定で「当面の間、当該基準を満たしているものとみなす」扱いに改められ、国等が全国で運用を開始した場合には速やかに導入するよう努めることとされています。なお、外来側の電子的診療情報連携体制整備加算には、マイナ保険証の利用率(算定月の3月前のレセプト件数ベースで30%以上。前月・前々月の率で代替可)などの要件があり、在宅医療DX情報活用加算とは要件の構成が異なります。
算定で誤りやすい点
- 在宅医療DX情報活用加算・訪問看護医療DX情報活用加算は、体制があるだけでは算定できません。留意事項通知では、居宅同意取得型のオンライン資格確認等で取得した診療情報・薬剤情報等を活用して計画的な管理を行うことを評価するものとされています。
- 在宅医療DX情報活用加算は、初回の訪問診療の場合、訪問診療の計画作成にあたって事前に診療情報等を活用していなければ算定できません。あらかじめ情報を取得していて、初回訪問時に活用できる場合は初回から算定できます。
- ステーションの訪問看護医療DX情報活用加算は、准看護師を除く看護師等が情報を取得等したうえで計画的な管理を行う場合が対象です。
- 掲示とウェブサイト掲載は、要件として内容が指定されています(居宅同意取得型で取得した情報を活用して訪問診療・訪問看護を行っていること、マイナ保険証の利用促進など医療DXに取り組んでいること)。
算定を裏付ける記録を残す
「情報を活用して計画的な管理を行った」ことは、後から確認できなければ意味がありません。私が担当している現場では、加算の対象患者ごとに次の項目を記録するようにしています。
- 居宅同意取得型で同意を取得した日と、同意の内容(薬剤情報・診療情報・特定健診等情報のどれに同意したか)
- 取得した情報の種類と取得日(再照会を含む)
- 取得した情報を踏まえて計画や指示に反映した内容の要点(例:他院処方との重複の有無を確認し処方を調整した、など)
- その月に算定したDX関連の加算の種類(重複算定の確認用)
電子カルテのテンプレートに定型の記載欄を作っておくと、医師や看護師の記載の負担を増やさずに、事務が月末に一覧で確認できるようになります。
情報連携・遠隔診療補助の評価も視野に入れる
医療DXは資格確認と処方だけではありません。関係者がICTで記録した情報を活用する評価や、看護師が同席するオンライン診療の評価も整備されています。令和8年度改定後の告示で確認できるものを挙げます。
| 評価 | 点数・金額 | 概要 |
|---|---|---|
| 在宅医療情報連携加算(在医総管等の注15) | 100点(月1回) | 連携する医師・歯科医師・薬剤師・訪問看護師・ケアマネジャー等がICTで記録した診療情報等を活用して計画的な医学管理を行う |
| 訪問看護医療情報連携加算(訪問看護管理療養費の注14) | 1,000円(月1回) | 令和8年度改定で新設。ステーションが関係職種のICT記録を取得・活用し、自らの記録も共有する |
| 訪問看護遠隔診療補助料(医療機関C005-1-3) | 265点(1日につき、月1回) | 令和8年度改定で新設。看護師等が患家で情報通信機器を用いた診療の補助を行う |
| 訪問看護遠隔診療補助料(ステーション) | 2,650円(月1回) | 令和8年度改定で新設。緊急に診療を要すると判断した主治医の指示で訪問し、診療の補助を行う |
このほか、訪問看護ステーションが訪問看護計画書・報告書を電磁的方法で主治医に提出する場合や、医療機関が指示書などの文書を電磁的方法で提供する場合は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守し、所定の電子署名を施すことが通知で求められています。紙からデータへの切替えは、署名の方法まで含めて設計することが大切です。
導入・運用のチェックリスト
- □ 医療機関等向け総合ポータルサイトで、オンライン資格確認の運用開始日を登録している
- □ 居宅同意取得型に使うモバイル端末とアプリを準備し、初回訪問の手順書を作った
- □ 往診では訪問の都度、資格確認と同意取得を行う運用になっている
- □ 電子処方箋の運用開始日を登録し、引換番号付き処方箋の出力・院内処方の登録ができる
- □ 処方を行う医師の電子署名(HPKIカード等)の準備状況を把握している
- □ 院内掲示とウェブサイトに、指定された掲示事項を載せている
- □ 令和8年6月以降に必要な届出(電子的診療情報連携体制整備加算など)を済ませた
- □ 外来・訪問診療・訪問看護が混在する患者で、DX関連の加算を月1つにするルールがある
- □ 加算を算定する患者について、情報を取得・活用したことが記録から確認できる
よくある質問
Q. 医療DX推進体制整備加算を届け出ていましたが、そのまま新しい加算を算定できますか。
A. できません。疑義解釈(その1)で、令和8年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算等を届け出ていた医療機関も、6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合は改めて届出が必要とされています。
Q. 在宅医療DX情報活用加算1と2の違いは何ですか。
A. 施設基準上、加算1は電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制が必要で、加算2はこの要件がありません。それ以外の要件(オンライン請求、オンライン資格確認、居宅同意取得型の活用体制、掲示等)は共通です。
Q. 訪問看護ステーションもマイナ保険証での資格確認が必要ですか。
A. 厚生労働省の医療機関等向けページでは、訪問看護ステーションのオンライン資格確認は保険証の廃止時期から義務化されたと説明されています(やむを得ない事情がある場合の経過措置あり)。訪問看護では居宅同意取得型の仕組みを使います。
Q. 毎回の訪問でマイナンバーカードを読み取る必要がありますか。
A. 継続的な訪問診療・訪問看護では、初回にカードで本人確認と同意登録を行えば、2回目以降は再照会で資格情報を取得する仕組みです。ただし往診は訪問の都度の確認が必要とされています。
まとめ
在宅医療の医療DXは、居宅同意取得型オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスの三つが柱です。令和8年度改定では医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました。在宅では在宅医療DX情報活用加算(加算1が11点、加算2が9点)と訪問看護医療DX情報活用加算(医療機関5点、ステーション50円)が評価されており、同じ月に重ねて算定できない組み合わせがあります。体制の整備だけでなく、情報を取得・活用した記録を残し、届出・掲示・ウェブ掲載まで含めて確認しておくことが、確実な算定につながります。
参考資料
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科診療報酬点数表(厚生労働省・令和8年3月)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)別添1(厚生労働省・令和8年3月、10月訂正版)
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号)(厚生労働省・令和8年3月、10月訂正版)
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)(厚生労働省・令和8年3月、10月訂正版)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号)(厚生労働省・令和8年3月)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保発0305第19号)(厚生労働省・令和8年3月)
- 訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第9号)(厚生労働省・令和8年3月)
- 個別改定項目について(中央社会保険医療協議会・令和8年2月)
- 疑義解釈資料の送付について(その1)(厚生労働省保険局医療課・令和8年3月)
- 疑義解釈資料の送付について(その4)(厚生労働省保険局医療課・令和8年4月)
- 疑義解釈資料の送付について(その7)(厚生労働省保険局医療課・令和8年5月)
- オンライン資格確認等について(第168回社会保障審議会医療保険部会 資料1)(厚生労働省保険局・令和5年9月)
- オンライン資格確認について(医療機関・施術所等、システムベンダ向け)(厚生労働省)
- マイナンバーカードの健康保険証利用について(国民向け)(厚生労働省)
- 電子処方箋(厚生労働省)
本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

