「この利用者の訪問看護は医療保険と介護保険のどちらで請求するのか」は、訪問看護ステーションだけでなく、指示書を出す在宅医療機関の事務にも関わる判断です。判定を誤ると返戻や過誤調整につながり、利用者の自己負担も変わってしまいます。この記事では、医療保険と介護保険の給付調整に関する通知(令和8年6月適用)を中心に、判定の考え方を手順に落とし込み、あわせて訪問診療と訪問看護が同じ日に重なったときの算定ルールを整理します。
この記事でわかること
- 要介護・要支援の認定がある人の訪問看護が原則として介護保険になる理由
- 認定があっても医療保険になる4つの場面と「厚生労働大臣が定める疾病等」
- 判定の手順と、現場でよくある誤り
- 同じ月に医療保険と介護保険が混在したときの加算の調整
- 訪問診療と訪問看護が同じ日に重なったときの算定の可否
大原則:要介護・要支援の認定がある人は介護保険が優先
訪問看護は、医療保険(健康保険法などに基づく訪問看護療養費)と介護保険(介護保険法に基づく訪問看護費)の両方に給付の仕組みがあります。両方の対象になる人については、介護保険が優先されるのが原則です。訪問看護療養費の留意事項通知でも、基準告示に定める場合を除き、介護保険法第62条に規定する「要介護被保険者等」については訪問看護療養費の算定対象としない、とされています。
「要介護被保険者等」とは、介護保険法第62条で要介護被保険者と居宅要支援被保険者をまとめて呼ぶ言葉です。つまり、要支援の人も含まれます。「要支援だから医療保険」という判断は誤りです。
そもそも介護保険の対象になるかどうか
厚生労働省の「介護保険制度の概要」によると、介護保険の被保険者は65歳以上の人(第1号被保険者)と、40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)です。65歳以上の人は原因を問わず要支援・要介護状態になったときに、40~64歳の人は末期がんや関節リウマチなど加齢に起因する疾病(特定疾病)が原因の場合に限って、介護保険のサービスを受けられます。
したがって、40歳未満の人、40~64歳で特定疾病によらない人、そもそも要介護認定を受けていない人の訪問看護は、医療保険で行うことになります。地方厚生局が示しているフローチャートも、まず年齢と認定の有無を確認する順番になっています。
認定があっても医療保険になる4つの場面
要介護被保険者等であっても、次の場合は医療保険の訪問看護療養費を算定できます。令和8年3月27日付で改正された給付調整の通知と、地方厚生局の解説資料をもとに整理します。
| 場面 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 特別訪問看護指示書(精神科特別訪問看護指示書を含む)の期間 | 急性増悪などで主治医が一時的に週4回以上の訪問看護が必要と認めて交付した指示の期間 | 交付の日から14日以内。月1回(気管カニューレ使用中・真皮を越える褥瘡の人は月2回) |
| ② 厚生労働大臣が定める疾病等の人 | 特掲診療料の施設基準等の別表第7に掲げる疾病等 | 別表第8(特別管理の対象)だけでは医療保険にならない |
| ③ 認知症以外の精神疾患の人 | 精神科訪問看護指示書に基づく精神科訪問看護 | 認知症が主傷病の人は対象外(精神科在宅患者支援管理料を算定する人を除く) |
| ④ 入院中(外泊日を含む)の退院に向けた訪問看護 | 在宅療養に備えた外泊時の訪問看護など | 要介護認定の有無にかかわらず医療保険で提供可能 |
「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表第7)
②の対象は、特掲診療料の施設基準等の別表第7に掲げる次の疾病等です(令和8年度改定後の通知の記載による)。
末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る))、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態。
令和8年度改定の疑義解釈(その1)では、主たる傷病名が「視神経脊髄炎」の利用者は「多発性硬化症」に、「多巣性運動ニューロパチー」の利用者は「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」に該当すると考えてよい、とされています。病名の表記が一覧と完全に一致しない場合は、このような疑義解釈が出ていないかを確認してから判断しましょう。
別表第8は、在宅酸素療法指導管理や留置カテーテル、人工肛門、真皮を越える褥瘡など、特別な管理が必要な状態の一覧です。医療保険の訪問看護では週4日以上の訪問や複数のステーションの利用が認められる根拠になりますが、要介護認定のある人を医療保険に切り替える根拠にはなりません。給付調整の通知で医療保険とされているのは、基準告示第2の1の(1)に規定する疾病等(別表第7)の利用者です。
判定の手順
新規の依頼を受けたときや、状態が変わったときは、次の順番で確認すると判断がぶれにくくなります。
- 年齢を確認する。40歳未満なら医療保険。
- 要介護・要支援の認定の有無と有効期間を確認する。認定がなければ医療保険。申請中の場合は、後述のとおり結果によって遡って扱いが変わる可能性がある。
- 精神科訪問看護指示書による精神科訪問看護か確認する。認知症以外の精神疾患が対象なら医療保険(認知症が主傷病なら原則対象外)。
- 主たる傷病名が別表第7に該当するか確認する。パーキンソン病は重症度の条件まで確認する。該当すれば医療保険。
- 特別訪問看護指示書が出ているか確認する。出ていれば、その指示期間だけ医療保険。期間が終われば介護保険に戻る。
- 入院中の外泊時の訪問か確認する。退院に向けた訪問なら医療保険。
- いずれにも当たらなければ介護保険。ケアプランに位置付けて提供する。
判定の結果は、指示書の写し、認定情報(被保険者証の写し等)、主たる傷病名とともに記録しておくと、後で請求内容を確認するときに根拠をたどれます。
架空のケースで確認する
手順に当てはめると、次のようになります(いずれも説明のための架空の例です)。
| ケース | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 82歳、要介護2、慢性心不全で状態は安定 | 介護保険 | 認定があり、4つの場面のいずれにも当たらない |
| 76歳、要支援1、在宅酸素療法中 | 介護保険 | 要支援も対象。在宅酸素は別表第8で、それだけでは切り替わらない |
| 70歳、要介護3、末期の悪性腫瘍 | 医療保険 | 別表第7に該当 |
| 79歳、要介護4、心不全の急性増悪で特別訪問看護指示書が交付 | 指示期間は医療保険、終了後は介護保険 | 特別指示の期間に限り医療保険 |
| 74歳、要介護1、パーキンソン病(ホーエン・ヤール2度) | 介護保険 | パーキンソン病はステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ・Ⅲ度が条件 |
| 71歳、要介護1、統合失調症で精神科訪問看護指示書が交付 | 医療保険 | 認知症以外の精神疾患への精神科訪問看護 |
| 35歳、認定なし、退院直後の創傷管理 | 医療保険 | 40歳未満は介護保険の被保険者ではない |
判定でよくある誤り
認定申請中の扱い
介護保険法第27条第8項では、要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じるとされています。申請中に「まだ認定が出ていないから」と医療保険で請求していた訪問看護は、認定が出ると申請日以降が介護保険の対象となり、請求のやり直しが必要になることがあります。申請中の利用者は一覧で管理し、結果が出た時点で請求の保険を見直す運用にしておくと安全です。
特別訪問看護指示の期間が終わった後
特別指示で医療保険に切り替わった利用者は、期間が終われば介護保険に戻ります。ステーションの請求ソフト上で保険の切替日を入れ忘れたり、ケアマネジャーへの連絡が遅れてケアプランの訪問回数が実態と合わなくなったりしやすいところです。指示期間の開始日と終了日を、医療機関・ステーション・ケアマネジャーの三者で同じ日付で共有してください。
介護保険の利用枠を理由にした切替
「介護保険の利用限度額に収まらないので、訪問看護だけ医療保険にしたい」という相談を受けることがありますが、医療保険で算定できるのは給付調整の通知で定められた場面に限られます。利用者や家族の希望、限度額の都合で保険を選ぶことはできません。訪問回数を増やす必要があるなら、ケアプランの見直しや、病状に応じた特別訪問看護指示書の要否を主治医に相談する、という順序で考えます。
施設に入居している人
訪問看護療養費の留意事項通知では、特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護の提供を受けている人などについては、基準告示に定める場合を除いて訪問看護療養費を算定しないとされています。有料老人ホームやグループホームの入居者は、施設の類型と介護保険サービスの利用状況を確認したうえで、例外に当たるかを個別に判断する必要があります。
医療機関の訪問看護と同じ月に重なる場合
同じ利用者に対し、医療機関が在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料、精神科訪問看護・指導料を算定した月は、原則としてステーションは訪問看護療養費を算定できません。別表第7・別表第8の疾病等の利用者、特別訪問看護指示書が交付され週4日以上の訪問が計画されている場合、退院後1月以内の利用者などは例外とされています。
同じ月に医療保険と介護保険が混在するときの加算の調整
特別訪問看護指示書の期間だけ医療保険になる利用者などでは、同じ月に介護保険と医療保険の両方で訪問看護を算定することがあります。この場合、給付調整の通知により、介護保険で算定している加算と同じ趣旨の加算を医療保険で重ねて算定することはできません。
| 介護保険で算定している加算 | 同じ月に医療保険で算定できないもの |
|---|---|
| 緊急時訪問看護加算、緊急時介護予防訪問看護加算、緊急時対応加算 | 24時間対応体制加算 |
| 特別管理加算 | 特別管理加算 |
| 看護・介護職員連携強化加算 | 看護・介護職員連携強化加算 |
| 専門管理加算 | 専門管理加算 |
| ターミナルケア加算(遠隔死亡診断補助加算を含む) | 訪問看護ターミナルケア療養費(遠隔死亡診断補助加算を含む) |
このほか、要介護被保険者等については在宅患者連携指導加算を算定できません。医療機関が自院の看護師で訪問する在宅患者訪問看護・指導料についても、介護保険でターミナルケア加算を算定した場合の在宅ターミナルケア加算などに同様の調整があります。どちらの保険で、どの加算を、どの月に算定したかを一覧で持っておくことが、重複算定を防ぐいちばん確実な方法です。
訪問診療と訪問看護が同じ日に重なったとき
在宅医療機関の事務にとってもう一つの悩みどころが、訪問診療と訪問看護が同じ日に行われたときの扱いです。ポイントは「どの保険の訪問看護か」と「医療機関とステーションが特別の関係にあるか」の二つです。
| 同じ日の組み合わせ | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 訪問診療+特別の関係にあるステーション(その医療機関の医師が指示書を交付)の医療保険の訪問看護 | 原則として訪問看護療養費は算定できない(例外あり) | 訪問看護療養費の留意事項通知 第4の1(2)、医科の留意事項通知 第2部第1節 |
| 訪問診療+特別の関係にないステーションの医療保険の訪問看護 | 上記の特別の関係による制限は及ばない | 同上 |
| 訪問診療+介護保険の訪問看護 | 在宅医療の同一日算定の考え方は介護保険の居宅サービスを対象としない | 給付調整の通知 第4の1 |
| 訪問診療+同じ医療機関の看護師による在宅患者訪問看護・指導料 | 同じ日にはいずれか一方のみ(訪問診療後の急変による往診料を除く) | 医科の留意事項通知 第2部第1節 |
| 訪問診療+特別の関係にある別の医療機関の訪問診療料等 | 特別の関係にある医療機関は算定できない(急変による往診料を除く) | 同上 |
特別の関係にあるステーションとの同日の例外
特別の関係にあるステーションが訪問看護療養費を算定できない日とは、指示書を交付した医師が所属する医療機関で、往診料、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)、在宅がん医療総合診療料、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者訪問栄養食事指導料のいずれかを算定した日です。ただし、次の場合は例外とされています。
- ステーションが訪問看護を行った後、利用者の病状の急変等により医療機関が往診を行い往診料を算定した場合
- 利用者が医療機関を退院後1月を経過するまでに往診料等を算定した場合
- 在宅患者訪問褥瘡管理指導料の算定に必要なカンファレンスを実施する場合で、継続的な訪問看護が必要なとき(訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)、訪問栄養食事指導料を算定する場合に限る)
反対に、医科の留意事項通知では、特別の関係にあるステーションが訪問看護療養費を算定した日は、その医療機関は訪問診療料等を算定できない(訪問看護後の急変による往診料を除く)とされています。どちらか一方しか算定できないため、同じ日に予定を組まないことが基本です。令和8年度改定で新設された包括型訪問看護療養費についても、疑義解釈(その13)で、特別の関係にある医療機関が往診料等を算定した日は算定できないことが示されています。
「特別の関係」とは
医科の留意事項通知では、医療機関・介護老人保健施設・指定訪問看護事業者の間で、開設者が同一、代表者が同一、代表者が親族等、役員等のうち相手方の役員等の親族等が占める割合が10分の3を超える、またはこれらに準じて人事・資金等を通じて経営方針に重要な影響を与えられる、といった関係がある場合を「特別の関係」としています。同じ法人が運営する診療所と訪問看護ステーションは、多くの場合これに当たります。
確認のコツ:毎月、訪問診療の実施日と、特別の関係にあるステーションの医療保険の訪問日を利用者ごとに並べ、同じ日付がないかを抽出します。介護保険の訪問看護や、特別の関係にないステーションの訪問は抽出対象から外して構いません。
よくある質問
Q. 末期がんの人は要介護認定があっても医療保険ですか。
A. 「末期の悪性腫瘍」は別表第7に含まれるため、要介護認定がある人でも訪問看護は医療保険になります。「末期」に当たるかどうかは医学的な判断になるため、事務だけで決めず、指示書の傷病名や病状・治療状態の欄にその旨がわかるように記載してもらうと、ステーション側の判定がぶれません。
Q. 在宅酸素療法をしている要介護者は医療保険になりますか。
A. 在宅酸素療法指導管理を受けている状態は別表第8に当たりますが、別表第7ではないため、それだけでは医療保険にはなりません。原則どおり介護保険です。ただし、特別訪問看護指示書が出た期間などは医療保険になります。
Q. 要介護認定のある人が入院中に外泊したときの訪問看護は。
A. 入院中(外泊日を含む)に退院に向けた訪問看護を行う場合は、要介護被保険者であるかどうかにかかわらず医療保険で提供できるとされています。
Q. 同じ日に訪問診療と介護保険の訪問看護があっても問題ありませんか。
A. 給付調整の通知では、在宅医療の同一日算定の考え方は介護保険の指定居宅サービスを対象とするものではないとされています。特別の関係にあるステーションであっても、介護保険の訪問看護であれば、この同一日の制限はかかりません。
まとめ
要介護・要支援の認定がある人の訪問看護は介護保険が原則で、医療保険になるのは、特別訪問看護指示書の期間、別表第7の疾病等、認知症以外の精神疾患への精神科訪問看護、入院中の外泊時の訪問看護の4つの場面です。別表第8と別表第7の混同、認定申請中の遡及、特別指示終了後の切替漏れが典型的な誤りです。訪問診療との同日については、医療保険の訪問看護で、かつ医療機関とステーションが特別の関係にある場合に制限がかかります。年齢、認定、傷病名、指示書の種類と期間、特別の関係の有無を一覧で管理し、毎月同じ手順で確認することをおすすめします。
参考資料
- 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(保医発0327第4号・老老発0327第2号)(厚生労働省・令和8年3月)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保発0305第19号)(厚生労働省・令和8年3月)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)別添1 医科点数表(厚生労働省・令和8年3月、10月訂正版)
- 疑義解釈資料の送付について(その1)(厚生労働省保険局医療課・令和8年3月)
- 疑義解釈資料の送付について(その13)(厚生労働省保険局医療課・令和8年9月)
- 介護保険制度の概要(厚生労働省老健局・令和7年7月)
- 介護保険法(第27条・第62条)(e-Gov法令検索)
- 訪問看護の概要(近畿厚生局・「医療保険の訪問看護について」掲載資料)
- 要介護者等の利用者に対する算定資料(近畿厚生局・令和8年)
本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

