令和8年度診療報酬改定で在宅医療は何が変わったか|訪問診療・在医総管・在支診

令和8年度診療報酬改定で在宅医療は何が変わったか|訪問診療・在医総管・在支診

令和8年度(2026年度)の診療報酬改定は2026年6月1日に施行され、訪問診療・往診、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)、在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)のいずれにも見直しが入りました。点数表の数字だけを追うと「少し上がった」「名前が変わった」で終わってしまいますが、事務の現場で効いてくるのは、届出の要否、毎月・四半期ごとの確認作業、24時間体制の文書の作り直しといった運用面の変化です。

この記事では、在宅医療を担う診療所の事務長・医事担当の方に向けて、厚生労働省の個別改定項目・告示・留意事項通知・施設基準通知・疑義解釈で確認できた変更点だけを整理します。資料で確認できなかった事項は書いていません。

この記事でわかること

  • 令和8年度改定で在宅医療(訪問診療・往診・在医総管・施設総管・在支診)の何が変わったか
  • 在医総管・施設総管の「月2回以上」区分に加わった重症患者割合の要件と、確認・届出のタイミング
  • 連携型機能強化型在支診の細分化、第三者による往診体制の明確化、BCP(業務継続計画)の要件追加と経過措置
  • 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算から在宅医療充実体制加算への変更点
  • 施行後のいま、事務が点検しておきたい項目

改定の全体像:施行日と届出の考え方

令和8年度改定の関係告示は2026年3月5日に公布され、6月1日(一部は4月1日)から適用されています。6月1日から新たな施設基準で算定するための届出は、5月7日以降に提出できる扱いでした。

施設基準の届出について、特掲診療料の施設基準通知(保医発0305第8号)の「第4 経過措置等」は、2026年5月31日時点で算定している特掲診療料を引き続き算定する場合(名称だけ変わったものを含む)は新たな届出は不要、としたうえで、次の3つの表で扱いを分けています。

  • 表1:新設または施設基準が創設されたもの(届出が必要)
  • 表2:施設基準が改正され、届出が必要なもの(経過措置の期限付きのものを含む)
  • 表3:施設基準が改正されたが届出は不要なもの

在宅医療に関係する主な項目を、この区分も含めて一覧にすると次のとおりです。

項目 主な変更内容(2026年6月以降) 事務で必要な対応
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ) 物価対応として点数を引上げ 点数マスタの更新
外来・在宅物価対応料(訪問診療時) 新設。訪問診療料等を算定した場合に3点 算定漏れの防止
在医総管・施設総管(月2回以上の区分) 重症患者割合等の基準(注16)を新設 2月・5月・8月・11月に確認、基準を満たさない場合は届出(表1)
在医総管・施設総管(残薬) 残薬の聴取と服薬管理・処方調整を要件化 診療録への記載の仕組み
在宅医療充実体制加算 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算を名称変更し、要件と点数を見直し 届出が必要(表1)
連携型機能強化型在支診 自院での連続24時間往診体制の有無で区分(ア・イ) アは届出が必要(表1)
在支診・在支病(BCP) 業務継続計画の策定と定期見直しを要件化 2027年6月1日以降も届け出る場合は届出(表2)
在支診・在支病(24時間体制) コールセンター等や外部医師を使う場合の要件を明確化 患家への文書・面談記録の見直し
在支診・在支病(年1回報告) 看取り数等の報告要件を削除 報告業務の見直し
往診時医療情報連携加算 支援を受ける側に機能強化型以外の在支診・在支病を追加 連携先の整理
介護保険施設等連携往診加算 施設とのカンファレンス頻度を見直し 届出不要(表3)
訪問診療薬剤師同時指導料 新設(6月に1回、300点) 対象患者の把握

訪問診療料・往診料と物価対応料の点数

個別改定項目では、物価高騰への対応として初・再診料等を見直す際に「初再診料が包括されるその他の点数、訪問診療料及びその他の入院料等についても同様に対応する」とされました。告示(医科点数表)で確認すると、在宅患者訪問診療料は次のとおりです。比較のため、令和6年度改定の概要資料に示された点数を併記します。

区分 令和6年度改定時点 令和8年6月以降
訪問診療料(Ⅰ)1 同一建物居住者以外 888点 890点
訪問診療料(Ⅰ)1 同一建物居住者 213点 215点
訪問診療料(Ⅰ)2 同一建物居住者以外 884点 886点
訪問診療料(Ⅰ)2 同一建物居住者 187点 189点
訪問診療料(Ⅱ) 150点 152点
往診料 720点 720点

あわせて、新しい「外来・在宅物価対応料」が設けられ、訪問診療時の区分は3点です。留意事項通知では、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)、(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定した場合に限り算定できるとされています。また告示の注で、2027年6月以降は所定点数の100分の200(2倍)で算定することが定められています。レセコンの設定が自動で付く仕組みになっているか、施行月のレセプトで一度確認しておくと安心です。

なお、在医総管・施設総管の基本の点数(医療機関の区分・重症度・訪問回数・単一建物診療患者数で決まる表)は、令和6年度改定の概要資料と令和8年の告示を主要な区分で突き合わせた限り、同じ値でした。今回の在医総管の見直しは「点数」より「どの区分で算定できるか」の要件側にあります。

在医総管・施設総管の見直し

「月2回以上」の区分に重症患者割合の要件(注16)

在宅時医学総合管理料(在医総管)と施設入居時等医学総合管理料(施設総管)には、「別に厚生労働大臣が定める状態の患者(別表第8の2)に月2回以上」「月2回以上」「月1回」などの区分があります。今回、このうち難病等以外の「月2回以上」の区分(情報通信機器を組み合わせる区分を含む)について、新たな基準を満たさない場合は「月1回」の区分で算定することになりました(在医総管の注16。施設総管にも準用)。

施設基準通知が示す基準は、次のいずれかに該当することです。

  • 直近3か月に、在宅患者訪問診療料を月2回以上算定する患者の延べ診療月数が30月未満であること
  • 30月以上の場合は、分子(別表第8の2の患者に月2回以上の区分を算定した回数+月2回以上訪問し包括的支援加算を算定する患者の延べ月数+在宅がん医療総合診療料を算定する患者の延べ月数)を、分母(月2回以上訪問する患者と在宅がん医療総合診療料の患者の延べ月数)で割った値が2割以上であること

分母からは、4か月前から1年前までの間に3月以上連続して訪問診療を行い、その後に自院の外来へ連続3月受診した患者がいる場合、その患者数×3月を差し引けます。訪問診療から自院の外来通院に移行した患者の分を調整する規定です。

運用面では次の点が重要です。

  • 該当可否は毎年2月・5月・8月・11月に確認し、変更があれば同月中に様式19で届け出ます。
  • 2026年8月は、在医総管・施設総管を届け出ている全ての医療機関が確認し、該当する場合も含めて結果を報告することとされました。
  • 疑義解釈(その6)では、基準に該当しない場合は2026年6月から減算が適用されるため、早期に確認する必要があると示されています。
  • 新たに在医総管等を届け出る際は、基準に該当するものとして差し支えないとされています(疑義解釈その8)。
  • 確認月に「該当しない」と届け出た後、それ以外の月に該当するようになった場合は、その時点で取り下げ、翌月から注16を適用せずに算定できるとされています(疑義解釈その10)。

影響の大きさを点数で見ると、たとえば機能強化型在支診(病床なし)の在医総管で単一建物診療患者が1人の場合、「月2回以上」は4,085点、「月1回」は2,505点です(いずれも令和8年6月以降の告示の点数)。分子に入る患者の拾い漏れは、そのまま収入差になります。

残薬の確認が算定要件に

留意事項通知に「患家における残薬の状況を患者又はその家族から聴取し、適切な服薬管理及び処方内容の調整を行うこと」が加わりました。担当医の指示を受けた看護職員等が情報を把握することも可能とされています。算定の可否が問われたときに示せるよう、カルテのテンプレートに残薬確認の欄を設けるなど、記録の型を決めておくことをおすすめします。

へき地診療所の常勤医要件

へき地診療所で、在宅医療を担当する医師が、連携するへき地医療拠点病院などでも勤務し、緊急時の連絡体制と24時間診療体制を確保している場合は、常勤でなくても在医総管・施設総管の施設基準を満たせることになりました。

訪問診療薬剤師同時指導料の新設

在医総管を算定している患者(施設総管の対象患者は除く)に、訪問薬剤管理指導等を行っている他の医療機関・薬局の薬剤師と医師が同時に訪問し、処方調整等を共同で行った場合の評価として、6月に1回300点が新設されました。疑義解釈(その9)では、在医総管の算定開始前である初回の訪問診療時には算定できないとされています。

在宅療養支援診療所・病院の見直し

連携型機能強化型在支診の細分化

連携型の機能強化型在支診が「ア」と「イ」に分かれました。アは、連携体制の要件に加えて、自院で普段から訪問診療等を行う医師による連続する24時間の往診体制を月に4回以上確保していることが求められます。ここでいう医師には、往診担当日の前日までに自院の診療録を閲覧でき、患者の診療方針を共有しており、自院からの往診経験が10回以上ある往診担当医も含まれます。

機能強化型としての点数(往診料の加算、在宅ターミナルケア加算、在医総管、施設総管、在宅がん医療総合診療料)を算定できるのはアのみで、イに該当する場合は在支診としての点数になります。アは施設基準通知の表1(新設)に掲げられており、届出が必要です。

コールセンター等・外部医師を使う24時間体制の明確化

告示では24時間の連絡を受ける者の表記が「保険医又は看護職員等」に改められ、施設基準通知では、患者に示す連絡先をコールセンター等が担う場合は、あらかじめ説明し、医療機関がコールセンター等からの連絡を24時間受ける体制を確保することが求められました。また、やむを得ず患家に事前に氏名を伝えていない往診医が往診する場合は、往診日以前に自院の在宅医療担当の常勤医師と面談して診療方針を共有している医師に限られ、そうした医師による体制は常時1人以下とされています。留意事項通知では、この場合に往診日と往診した医師の氏名を診療報酬明細書の摘要欄に記載することとされています。

疑義解釈では次の取扱いが示されています。

  • 往診担当医の氏名を伏せた説明は不可。雇用契約のない医師を文書に掲載することも認められない(その2)。
  • 面談は往診担当日の前日以前に、医療機関への訪問による対面の面談か、医療機関が開催・参画するカンファレンスへの対面出席で行う(その2)。
  • 予定医師の急病など緊急時の例外は、6か月間に10日が上限(その4)。
  • 対面の面談計画を文書で定めている場合は2026年12月31日まで体制を満たすものとし、2027年1月1日以降は対面で面談した医師に限る(その4)。

BCP(業務継続計画)の策定と経過措置

全ての在支診・在支病に、業務継続計画の策定と定期的な見直しが要件として加わりました。2026年3月31日時点で届出済みの医療機関は、2027年5月31日までは要件を満たすものとみなされます。施設基準通知の表2では、在支診(連携型機能強化型アを除く)と在支病は「2027年6月1日以降に引き続き届け出る場合に限る」として届出が必要な項目に挙がっています。疑義解釈(その12)では、日本医師会の「診療所用業務継続計画(BCP)のひな形」を参考にしてもよいとされています。

年1回の看取り数等の報告要件を削除

これまで在支診・在支病には、年に1回、在宅看取り数や地域ケア会議等への出席状況を報告する要件がありましたが、業務の簡素化の観点から削除されました。一方、施設基準を届け出た医療機関が毎年8月1日現在で基準への適合性を確認して報告する仕組み自体は、施設基準通知に残っています。

外来医師過多区域での期限付き指定

外来医師過多区域において、地域で不足している医療機能等に係る都道府県知事の要請に応じなかったことなどにより、保険医療機関の指定に3年以内の期限が付された診療所は、在支診の届出ができないこととされました(機能強化加算や地域包括診療料なども同様)。

在宅医療充実体制加算(旧・在宅緩和ケア充実診療所・病院加算)

在宅緩和ケア充実診療所・病院加算は「在宅医療充実体制加算」に名称が変わり、要件と点数が見直されました。

算定する場面 改定前(在宅緩和ケア充実診療所・病院加算) 改定後(在宅医療充実体制加算)
在医総管(単一建物診療患者1人/2〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上) 400/200/100/85/75点 800/400/200/170/150点
施設総管(同上) 300/150/75/63/56点 600/300/150/128/113点
往診料の緊急・夜間休日・深夜加算への上乗せ 100点 200点
在宅ターミナルケア加算への上乗せ 1,000点 2,000点
在宅がん医療総合診療料への上乗せ 150点 300点

※施設総管の20〜49人・50人以上の値は告示(医科点数表)の点数です。

施設基準の主な内容は、在宅医療を担当する常勤換算医師数3名以上かつ常勤医師2名以上、機能強化型であって自院単独で24時間連絡・往診体制を確保していること、過去1年間の緊急往診30件以上かつ看取りと超・準超重症児の合計30件以上、重症患者等の延べ診療月数の割合2割以上、医師1人当たりの訪問診療患者数100人以下、在宅医療情報連携加算の届出、医師等の教育の受入れ実績などです。疑義解釈(その4)では、2026年度中に届け出る場合に限り、重症患者割合は直近3か月の実績で届け出られるとされています。

その他の在宅関連の見直し

  • 往診時医療情報連携加算:支援を受ける側(平時に訪問診療をしている医療機関)に、機能強化型以外の在支診・在支病も含まれるようになりました。
  • 介護保険施設等連携往診加算:協力医療機関と施設とのカンファレンス頻度が、ICT(情報通信技術)で情報連携している場合は年1回以上、していない場合は原則年3回以上(施設の入所者の往診を年2件以上行い情報共有している場合は年1回以上)に見直されました。
  • 在宅医療DX情報活用加算:電子カルテ情報共有サービスに係る要件について、満たしているものとみなす経過措置が「当面の間」に延長されました。なお、加算1(11点)・加算2(9点)の区分は令和7年4月の改正で設けられたものです。
  • 在宅医療情報連携加算:使用できるICTの要件(一元管理されたサーバーでの保管、患者が同意した参加者のみでの共有など)が明確化されました。施設基準通知では届出不要の改正(表3)に分類されています。
  • 在宅療養指導管理材料加算:算定要件が「3月に3回」に統一されました。

施行後のいま、事務が点検したいこと

  • 訪問診療料・物価対応料の点数マスタが改定後の値になっているか、6月以降のレセプトで確認したか
  • 在医総管・施設総管の注16について、2026年8月の確認・報告を済ませ、次の11月の確認日程を決めているか
  • 注16の分子に入る患者(別表第8の2、包括的支援加算の対象、在宅がん医療総合診療料)を月ごとに抽出できる仕組みがあるか
  • 残薬確認がカルテに残る様式になっているか
  • 連携型機能強化型の場合、自院の連続24時間往診体制(月4回以上)の実績を記録しているか
  • 患家に渡す24時間体制の文書に、往診担当医の氏名・担当日が正しく載っているか。外部医師の面談記録があるか
  • BCPを策定し、2027年5月31日の経過措置期限と、その後の届出の要否を管理表に入れているか
  • 在宅医療充実体制加算を算定する場合、届出を行っているか

注16の集計でつまずきやすいのは、分子に入る患者の拾い漏れです。包括的支援加算は、留意事項通知でどの状態に該当するかを診療報酬明細書の摘要欄に記載することとされています。この記載が月によって抜けていると、算定の根拠が弱くなるだけでなく、注16の分子を集計するときにも患者を拾えなくなります。対象状態の記載は「算定のため」と「注16の集計のため」の両方に使うものと位置づけ、月次のレセプト点検項目に入れておくと確認作業が楽になります。

よくある質問

Q. 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算を届け出ていました。そのまま在宅医療充実体制加算を算定できますか?

A. 在宅医療充実体制加算は施設基準通知の表1(新設または施設基準が創設されたもの)に掲げられており、算定には届出が必要です。要件も変わっているため、改めて基準を満たすか確認したうえで届け出てください。

Q. 注16の基準を満たしていれば、何か届出は必要ですか?

A. 基準を満たしている医療機関が改めて届け出る必要はないとされています。ただし2026年8月は全ての医療機関が確認し、結果を様式19で報告することとされました。その後も2月・5月・8月・11月の確認は続きます。

Q. BCPはいつまでに作ればよいですか?

A. 2026年3月31日時点で在支診・在支病の届出をしている医療機関は、2027年5月31日まで要件を満たすものとみなされます。2027年6月1日以降も引き続き届け出る場合は届出が必要とされているため、それまでに策定し、届出の準備をしておく必要があります。新規に届け出る場合は経過措置の対象外です。

Q. 訪問診療料の引上げは届出が必要ですか?

A. 点数の引上げ自体に届出は不要です。レセコンの点数マスタが更新されているかを確認してください。

まとめ

令和8年度改定の在宅医療分野は、訪問診療料の小幅な引上げと物価対応料の新設という「点数」の変化に加えて、在医総管の月2回以上の区分に重症患者割合の要件が付いたこと、在支診の24時間体制の中身が問われるようになったことなど、「運用」の変化が中心です。特に注16は四半期ごとの確認と届出が続く仕組みのため、一度きりの対応ではなく、月次の集計に組み込むことが大切です。経過措置の期限(BCPは2027年5月31日、往診医の対面面談は2026年12月31日まで)も、管理表で見える化しておきましょう。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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