医師の居宅療養管理指導の算定ルール|単一建物・月2回・在医総管との関係

医師の居宅療養管理指導の算定ルール|単一建物・月2回・在医総管との関係

訪問診療を始めると、要介護認定を受けている患者さんについては、医療保険のレセプトとは別に、介護保険の「居宅療養管理指導費」を国保連へ請求することになります。ところが、医療と介護で人数の数え方や記録のルールが微妙に違うため、「(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらか」「同じ建物の何人目か」「ケアマネジャーへの情報提供は何を残せばよいか」で迷う医事担当者は少なくありません。この記事では、医師が行う居宅療養管理指導について、告示・留意事項通知・Q&Aで確認できる範囲の算定ルールと、月次の請求手順を整理します。

この記事でわかること

  • 医師の居宅療養管理指導費(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数と、単一建物居住者の3区分
  • 「月2回まで」「算定日は訪問診療・往診の日」など回数と日付のルール
  • ケアマネジャーへの情報提供の方法と、診療録に残すべき記録
  • 在宅時医学総合管理料(在医総管)など医療保険側の算定との関係
  • 介護給付費明細書の書き方と、国保連への請求の流れ

居宅療養管理指導(医師)の位置づけと対象者

居宅療養管理指導は介護保険の居宅サービスの一つです。保険医療機関は、介護保険法第71条により、居宅療養管理指導について指定居宅サービス事業者の指定があったものとみなされます(いわゆる「みなし指定」)。そのため、訪問診療をしている診療所は、別途の指定申請をしなくても請求できる立場にあります。

算定の基本要件は、単位数表(平成12年厚生省告示第19号)の注1に書かれています。要点は次のとおりです。

  • 対象は「在宅の利用者であって通院が困難なもの」(要介護者。要支援者は介護予防居宅療養管理指導)
  • 医師が居宅を訪問して行う、計画的かつ継続的な医学的管理に基づくこと
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)に対して、居宅サービス計画(ケアプラン)の策定等に必要な情報提供を行うこと(利用者の同意を得て行うものに限る)
  • 利用者または家族等に対して、介護サービスを利用する上での留意点や介護方法等について指導・助言を行うこと

留意事項通知(老企第36号)は、「ケアマネジャーへの情報提供がない場合には、算定できない」とはっきり書いています。訪問診療をしただけでは、居宅療養管理指導費は算定できません。

請求で押さえておきたい性質は次の3点です。

  • 区分支給限度基準額の対象外:介護保険法施行規則第66条が定める居宅サービス等区分に居宅療養管理指導は入っていません。そのため、ケアマネジャーの給付管理(限度額の枠)とは別に請求できます。
  • 1単位は10円:「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成27年厚生労働省告示第93号)で、居宅療養管理指導はどの地域区分でも割合が「千分の千」とされています。地域区分による上乗せはありません。
  • 利用者負担と交通費:利用者からは負担割合に応じた利用料を受け取ります。指定居宅サービス等基準第87条により、あらかじめ説明して同意を得れば、提供に要する交通費の支払を受けることもできます。

単位数:(Ⅰ)(Ⅱ)と単一建物居住者の3区分

医師が行う場合の単位数は、令和6年度介護報酬改定で見直され、居宅療養管理指導は令和6年6月1日施行となりました(訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションと同じく6月施行のグループです)。現在の単位数は次のとおりです。

区分(1回につき) 単一建物居住者1人 単一建物居住者2〜9人 上記以外(10人以上)
居宅療養管理指導費(Ⅰ)
((Ⅱ)以外の場合)
515単位 487単位 446単位
居宅療養管理指導費(Ⅱ)
(在医総管・施医総管を算定する利用者)
299単位 287単位 260単位

出典:令和6年厚生労働省告示第86号(令和6年6月1日以降の単位数)。介護予防居宅療養管理指導費(医師)も同じ単位数です。

令和8年度には介護報酬の期中改定(令和8年6月施行の処遇改善加算の拡充など)が行われましたが、改正告示(令和8年厚生労働省告示第87号)と留意事項通知の改正箇所に居宅療養管理指導は含まれていません。2026年10月時点でも、上の表の単位数が使われています。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ目

留意事項通知では、「当該医師が当該月に医療保険において、『在宅時医学総合管理料』又は『施設入居時等医学総合管理料』を当該利用者について算定した場合には、当該医師に限り居宅療養管理指導費Ⅱを算定する」とされています。判断は月単位・医師単位です。同じ月に在医総管(在宅時医学総合管理料)または施医総管(施設入居時等医学総合管理料)を算定していれば(Ⅱ)、算定していなければ(Ⅰ)です。

実務では、在医総管の算定可否は月末までの訪問回数で決まります。そのため、居宅療養管理指導の区分も月末にまとめて確定させるのが安全です。月の途中で入院し、在医総管を算定しない月になった場合は、居宅療養管理指導も(Ⅰ)に変わるので見落とさないようにします。

単一建物居住者の数え方(医療保険と違う点に注意)

告示の注1では、医師の場合の単一建物居住者を「当該利用者が居住する建物に居住する者のうち、当該指定居宅療養管理指導事業所の医師が、同一月に訪問診療、往診又は指定居宅療養管理指導を行っているもの」と定義しています。つまり、介護保険の居宅療養管理指導を算定していない人でも、同じ月にその建物で訪問診療や往診をしていれば人数に入ります。

一方、医療保険の在医総管で使う「単一建物診療患者」は、在医総管・施医総管を算定する人数で数えます(令和8年度の留意事項通知 C002(4))。同じ建物でも、医療側と介護側で人数がずれることがあります。医療側の集計をそのまま介護側に流用すると区分を誤るおそれがあるので、建物ごとに「介護側の人数」を別に数える欄を用意しておくと安全です。

平成30年度介護報酬改定Q&A(Vol.4)では、次の扱いが示されています。

  • 建築物で居宅療養管理指導を行う利用者数が戸数の10%以下の場合、または戸数20戸未満で利用者が2人以下の場合は、利用者ごとに「1人」の区分で算定する
  • ユニット数3以下の認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)は、ユニットごとの人数を単一建物居住者の人数とみなす
  • 建物内で1つの同一世帯の利用者だけに行う場合は、利用者ごとに「1人」の区分。ただし同居夫婦の世帯が2世帯あるような場合は、合計人数で区分する
  • 月の途中で死亡・転居により人数が減った場合は、当初予定の人数の区分で算定する。転入で増えた場合は、もともとの利用者は当初の区分、転入者は転入時点の全利用者数の区分で算定し、事由を診療録等に記載する

回数・算定日・明細書の摘要欄のルール

回数と日付のルールは、請求ミスがいちばん起きやすいところです。留意事項通知(老企第36号 第2の6(3)④⑤)で確認できる内容を整理します。

  • 算定回数:主治の医師が、1人の利用者について月2回まで(告示注1も「1月に2回を限度」)
  • 算定日:当該月の訪問診療または往診を行った日
  • 摘要欄:訪問診療もしくは往診の日を記入する。サービス担当者会議に参加した場合は参加日、参加が困難な場合は文書等を交付した日を記入する

令和6年6月版の「介護給付費請求書等の記載要領」の別表1でも、居宅療養管理指導は「算定回数に応じて訪問日等を記載すること(訪問日等が複数あるときは「,(半角カンマ)」で区切る)」とされています。明細書の「サービス実日数」には、居宅療養管理指導のために利用者の居宅を訪問した日数を記載します。

月に3回以上訪問診療をしても、居宅療養管理指導費は2回までです。逆に、訪問診療をしていない日(電話相談だけの日など)を算定日にすることはできません。

情報提供と指導・助言の要件、記録の残し方

ケアマネジャーへの情報提供

留意事項通知では、情報提供はサービス担当者会議への参加を基本とし、その場合は必ずしも文書による必要はないとしています。会議への参加が難しい場合や会議が開かれない場合は、別紙様式1(医師)等により、メールやFAXも含めた文書で情報提供すれば足ります。

記録の残し方は次のとおりです。

  • 会議に参加して情報提供した場合:別紙様式1を参考に要点を記載する。医療保険の診療録に書いてもよいが、下線や枠で囲むなどして他の記載と区別する
  • 文書で情報提供した場合:様式等の写しを診療録に添付するなどして保存する

情報提供すべき事項は、留意事項通知で次の5つとされています。(e)は令和6年度改定で追加されました。

  1. (a)基本情報(医療機関名、住所、連絡先、医師氏名、利用者の氏名・生年月日・性別・住所・連絡先等)
  2. (b)利用者の病状、経過等
  3. (c)介護サービスを利用する上での留意点、介護方法等
  4. (d)利用者の日常生活上の留意事項、社会生活面の課題と地域社会において必要な支援等
  5. (e)人生の最終段階における医療・ケアに関する情報等

あわせて令和6年度改定では、診療方針について利用者の意思決定支援を行った場合に、関連する情報をケアマネジャー等に提供するよう努めることも追記されています。

利用者・家族への指導・助言

指定居宅サービス等基準第89条は、利用者や家族への指導・助言について「療養上必要な事項等を記載した文書を交付するよう努めなければならない」としています。また、同条は、ケアマネジャー等への情報提供はサービス担当者会議への参加が原則で、参加が難しい場合は原則として文書を交付して行うことを定めています。提供したサービスの記録は、同基準第90条の2により完結の日から2年間保存します。指定権者の条例で別の定めがある場合もあるので、確認しておいてください。

月末の記録点検チェックリスト(医師の居宅療養管理指導)

  • □ 算定する日に、訪問診療または往診の記録がある
  • □ 同月の算定は2回以内になっている
  • □ ケアマネジャーへの情報提供の記録がある(会議参加の要点記載、または文書の写しの添付)
  • □ 情報提供の内容に(a)〜(e)が入っている(該当しない項目は空欄理由が分かる)
  • □ 利用者・家族への指導・助言の要点が残っている(文書を交付した場合は写し)
  • □ 同月に在医総管・施医総管を算定したかどうかで(Ⅰ)(Ⅱ)が決まっている
  • □ 単一建物居住者の人数を「訪問診療・往診・居宅療養管理指導をした人」で数えている
  • □ 情報提供について利用者の同意を得ている

医療保険(在医総管・診療情報提供料など)との関係

要介護者に対する医療保険の算定可否は、「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」で整理されています。令和8年度診療報酬改定に合わせて令和8年3月27日に改正され(老老発0327第2号・保医発0327第4号)、令和8年6月1日から適用されています。自宅等で療養する患者について、居宅療養管理指導と関係が深い項目を抜き出すと次のようになります。

医療保険の項目 居宅療養管理指導(医師)を算定する月の扱い
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ) 算定できる。訪問診療の日が居宅療養管理指導の算定日になる
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料 算定できる(対象施設等の条件は給付調整の別紙による)。算定した月は居宅療養管理指導が(Ⅱ)になる
診療情報提供料(Ⅰ)注2(市町村・指定居宅介護支援事業者等への情報提供) 同一月に居宅療養管理指導費(医師)を算定している場合は算定できない
診療情報提供料(Ⅰ)注3(保険薬局への在宅患者訪問薬剤管理指導に必要な情報提供) 同上
診療情報提供料(Ⅰ)注14・注15(歯科医療機関連携加算) 同上
在宅患者連携指導料 要介護被保険者等については算定できない(居宅療養管理指導の有無にかかわらない)

このほか、給付調整の通知では次の点も示されています。

  • 在宅医療の「同一日算定」の考え方に、介護保険の指定居宅サービスは含まれない
  • 月の途中で要介護被保険者等となった場合、その日から同一の傷病等についての給付が医療保険から介護保険へ変わる

要介護認定は申請日にさかのぼって効力を生じます(介護保険法第27条第8項)。認定結果が出る前に訪問を始めた患者は、結果が出た時点で、申請日以降に医療保険で算定した診療情報提供料(Ⅰ)注2などとの重複がないかを見直す必要があります。

介護給付費の請求の流れ(月次)

医療機関が居宅療養管理指導を請求するときの流れを、時系列で整理します。

  1. 開始時:介護保険被保険者証・負担割合証で、要介護度、認定有効期間、負担割合、保険者を確認する。重要事項を説明して同意を得る(指定居宅サービス等基準第8条を第91条で準用)。担当ケアマネジャーの事業所と連絡先を控える
  2. 月中:訪問診療・往診のたびに、指導・助言の要点を記録する。サービス担当者会議の日程が入れば参加し、出られない場合は文書による情報提供を準備する
  3. 月末:対象者ごとに、算定する日(最大2回)、(Ⅰ)(Ⅱ)、単一建物居住者の区分を確定する。情報提供の記録がない人は算定しない
  4. 明細書作成:居宅サービス用の介護給付費明細書を作成する。居宅療養管理指導だけを請求する場合、「居宅サービス計画」欄は記載しない。請求額集計欄の「計画単位数」も記載不要(記載要領)。摘要欄に訪問日等を入れる
  5. 請求:各月分を翌月10日までに国保連へ請求する(「介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令」第3条)
  6. 審査結果の確認:返戻は内容を直して再請求する。支払決定後に誤りが分かった場合は、保険者に過誤申立てをしてから再請求する。過誤の締切や様式、電子申請の可否は保険者ごとに違うので、それぞれの案内を確認する

生活保護の介護扶助は法別番号12・介護券、難病法の特定医療は法別番号54で、どちらも居宅療養管理指導が給付対象に含まれます(介護給付費請求書等の記載要領 別表2)。公費の受給者番号の転記漏れは返戻の原因になるので、券面・受給者証との突合を月末の点検に組み込んでおくと安心です。

よくある質問

Q. 要支援の利用者も同じ単位数ですか?

A. 要支援者は「介護予防居宅療養管理指導費」で算定します。医師が行う場合の単位数は、(Ⅰ)(Ⅱ)、単一建物居住者の3区分とも、要介護者と同じです(令和6年6月以降)。同じ建物に要介護者と要支援者がいる場合の区分の考え方は、Q&Aや保険者の案内で確認してください。

Q. 介護認定を受けていない訪問診療の患者も、単一建物居住者の人数に入りますか?

A. 入ります。医師の居宅療養管理指導の単一建物居住者は、同一月にその医師が訪問診療・往診・居宅療養管理指導を行っている居住者で数えると告示に書かれているためです。医療保険の在医総管の「単一建物診療患者」とは数え方が違う点に注意してください。

Q. サービス担当者会議に出られなかった月は算定できませんか?

A. 会議への参加が困難な場合や会議が開かれない場合は、別紙様式1等による文書(メール・FAX可)での情報提供で足りるとされています。写しを診療録に添付するなどして保存してください。会議にも出ず、文書での情報提供もしていない月は算定できません。

Q. 在医総管を算定したのに、居宅療養管理指導を(Ⅰ)で請求してしまいました。

A. 同じ医師が同じ月に在医総管・施医総管を算定した場合は(Ⅱ)です。審査で返戻されたものは直して再請求し、支払決定後に気づいた場合は、保険者へ過誤申立てをして取り下げたうえで正しい区分で再請求します(申立ての時期・方法は保険者の案内に従います)。毎月の点検で、医療保険のレセプトの在医総管の有無と、介護の(Ⅰ)(Ⅱ)を突き合わせるのが確実です。

まとめ

医師の居宅療養管理指導は、訪問診療とセットで発生しますが、算定要件の中心は「ケアマネジャーへの情報提供」と「利用者・家族への指導・助言」です。単位数は令和6年6月以降、(Ⅰ)515・487・446単位、(Ⅱ)299・287・260単位で、令和8年度の期中改定でも変わっていません。(Ⅰ)(Ⅱ)は同月の在医総管・施医総管の算定で決まり、単一建物居住者は訪問診療・往診の患者も含めて数えます。月2回まで、算定日は訪問診療・往診の日、摘要欄には訪問日と会議参加日(または文書交付日)を記載します。医療保険の診療情報提供料(Ⅰ)注2・注3との重複にも注意しながら、月末に医療と介護の両方のデータを突き合わせる習慣をつけると、返戻と過誤はかなり減らせます。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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