在宅医療クリニックの経営指標の見方|患者数・単価・構成比と月次管理表

在宅医療クリニックの経営指標の見方|患者数・単価・構成比と月次管理表

在宅医療クリニックの月次の数字は、外来中心の診療所と同じ感覚で見ると判断を誤りがちです。患者数が増えたのに収入が伸びない、訪問件数が多すぎて減算の基準に触れていた、といったことが起こり得るからです。この記事では、事務長・院長が毎月確認したい経営指標の定義と読み方を、診療報酬の算定構造や施設基準の判定基準と結びつけて整理し、表計算ソフトで作れる月次管理表の設計例を紹介します。文中の数値例はすべて架空のものです。

この記事でわかること

  • 在宅医療の収益を「管理料」「訪問診療料」「往診・加算」に分けて見る理由
  • 患者数・訪問件数・1人あたり単価・構成比・新規と終了・医師1人あたり件数・キャンセル率の定義
  • 施設基準や減算の判定に直結する「直近3か月」「過去1年」の指標
  • 月次管理表のシート構成と列の設計例
  • 架空の数値例による指標の読み方

まず収益の構造を分解する

在宅医療の診療報酬は、おおまかに①月1回算定する医学管理料(在宅時医学総合管理料(以下、在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(以下、施設総管))、②訪問のたびに算定する在宅患者訪問診療料、③臨時の往診料と各種加算、の3つで構成されます。このうち①の点数は、医療機関の区分(機能強化型の在宅療養支援診療所か、それ以外の在宅療養支援診療所(以下、在支診)か、それ以外か)、患者の住まい(居宅か施設か)、月の訪問回数、そして単一建物診療患者の人数によって大きく変わります。

令和8年6月以降の点数で、在支診(機能強化型以外)が「別に厚生労働大臣が定める状態」に当たらない患者を診る場合を例にとると、次のようになります。ここでいう機能強化型は、点数表の「在宅療養支援診療所であって別に厚生労働大臣が定めるもの」(施設基準通知第9の1の(1)と(2)のア)を指します。

単一建物診療患者数 在医総管 月2回以上 在医総管 月1回 施設総管 月2回以上 施設総管 月1回
1人 3,685点 2,285点 2,585点 1,625点
2人以上9人以下 1,985点 1,265点 1,385点 905点
10人以上19人以下 985点 665点 985点 665点
20人以上49人以下 875点 570点 875点 570点
上記以外(50人以上) 745点 490点 745点 490点

同じ「月2回訪問している患者1人」でも、住まいと同じ建物の患者数によって管理料が数倍違うことがわかります。訪問ごとの在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「1」も、同一建物居住者以外の場合は890点、同一建物居住者の場合は215点です(いずれも令和8年6月以降)。このため「患者1人あたりの単価」は、構成の変化を分けて見ないと解釈できません。

毎月見る基本指標と定義

指標は、定義を一度決めたら変えないことが何より大切です。担当者が変わって数え方が変わると、前年比較が意味をなさなくなります。

指標 定義(計算式の例) 見るポイント
在籍患者数 月末時点で訪問診療を継続している患者数 新規・終了と合わせて増減の理由を説明できるか
実患者数 当月に1回以上訪問診療を行った患者数 在籍数との差(入院中など)を把握する
訪問診療件数 当月の訪問診療の延べ回数(往診は別に集計) 医師別・曜日別・地域別にも集計する
往診件数 当月の往診の延べ回数。うち緊急、夜間・休日、深夜を区分 加算区分ごとに集計すると施設基準の実績にも使える
1人あたり月間点数 在宅医療に関する総点数÷実患者数 居宅・施設、単一建物区分、訪問回数区分ごとに分けて比較する
構成比 居宅と施設、単一建物区分、月2回以上と月1回、別に厚生労働大臣が定める状態の患者の割合 単価が変わったときの主な原因になる
新規患者数 当月に訪問診療を開始した患者数(紹介元別) 紹介元の偏り、居宅と施設の内訳
終了患者数 当月に終了した患者数(理由別:在宅での死亡、入院、施設入所・転居、転医、通院への移行) 看取りの実績、入院の多さ
医師1人あたり訪問件数 訪問診療件数÷訪問診療を担当した医師の常勤換算数 負荷の偏り、採用の判断材料
キャンセル率 予定していた訪問のうち中止・延期になった件数÷予定件数 当日中止のみか、事前の日程変更を含むかを定義で固定する

キャンセル率は在宅医療特有の指標です。入院、体調不良、家族の都合など理由別に分けておくと、訪問ルートの組み方や事前確認の電話の要否を検討する材料になります。私が担当している現場でも、理由別に集計を始めてから、前日の確認連絡をどの患者に優先すべきかが見えるようになりました。

施設基準・減算の判定に直結する指標

在宅医療の管理表で最も重要なのが、この区分です。施設基準や点数表の注には、直近1か月・直近3か月・過去1年の実績で判定する基準が多数あり、気づかないうちに基準を外れると、減算や届出の変更が必要になります。令和8年度改定後の主なものを整理します。

指標 基準(令和8年6月以降) 根拠 確認の頻度
往診・訪問診療を実施した患者の割合 直近1か月に初診・再診・往診・訪問診療を実施した患者のうち9割5分以上の場合、在支診は追加要件(直近1年に5つ以上の医療機関からの文書紹介、看取り20件以上等、施設総管算定患者7割以下、要介護3以上等5割以上)を満たす必要。在支診以外の診療所は在医総管・施設総管の「3」が100分の80 施設基準通知 第9・第15、在医総管 注8 毎月
直近3か月の訪問診療回数÷患者数(在支診) 12未満(回数が120以下なら対象外。別に定める疾病等の患者、死亡した者、新規開始・終了した患者等は除いて数える)。満たさなくなった場合、その後の直近1月に限り、同一患者・同一月の5回目以降の訪問診療が100分の50 施設基準通知 第9の3、訪問診療料(Ⅰ)注12 毎月
直近3か月の訪問診療回数(特別の関係にある医療機関と合算) 2,100回未満であること。2,100回以上になると単一建物診療患者10人以上の区分の点数が100分の60(紹介実績、看取り実績等、施設総管の割合7割以下、要介護3以上等5割以上の4要件をすべて満たす場合を除く) 施設基準通知 第15の3、在医総管 注14 2・5・8・11月
月2回以上訪問する患者の延べ診療月数と重症等の割合 直近3か月の延べ診療月数が30月以上の場合、重症等の割合が2割以上。満たさない場合、月2回以上の区分を月1回の区分で算定 施設基準通知 第15の4、在医総管 注16 2・5・8・11月
緊急往診・在宅看取りの件数(過去1年) 単独型の機能強化型:緊急往診10件以上・看取り4件以上等。在宅療養実績加算1:10件以上・4件以上、同2:4件以上・2件以上。在宅医療充実体制加算:緊急往診30件以上、看取り等30件以上 施設基準通知 第9 毎月(過去12か月の移動合計)
各年度5~7月の訪問診療回数(在支診) 2,100回を超える場合は、次年の1月までに在宅データ提出加算の届出 施設基準通知 第9 毎年8月
常勤換算医師1人あたりの訪問診療患者の実人数 在宅医療充実体制加算では100人以下(単一建物診療患者2人以上の区分の患者と月1回の患者は、それぞれ70人を上限に1人を0.5人とみなせる) 施設基準通知 第9の2(3)、疑義解釈その4・その7 届出前、以後毎月

令和8年度改定で新設された「注16」に注意
在医総管の注16は、月2回以上訪問している患者のうち重症等の患者の割合を見る新しい基準です。疑義解釈その6(問15)では、令和8年8月に在医総管・施設総管を届け出ているすべての医療機関が該当性を確認して報告する必要があること、基準に該当しない場合は令和8年6月から減算が適用されることが示されています。以後は毎年2月・5月・8月・11月に確認し、変更があれば届け出ます。なお、該当しない旨を届け出た後、確認月以外の月に基準を満たすようになった場合は、届出を取り下げて翌月から注16を適用せずに算定できるとされています(その10 問3)。

看取りの実績については、あらかじめ聴取した患者・家族の意向に基づき、受入医療機関で7日以内の入院を経て死亡した患者で、入院日を含む直近6か月間に訪問診療を行っていた場合(一定の点数を算定している場合に限る)も、在宅における看取りの実績に含められる取扱いがあります。終了理由を「入院」と一括りにせず、入院日数と死亡の有無まで記録しておくと、実績の取りこぼしを防げます。

月次管理表の作り方

データの出どころを決める

管理表の数字は、レセプト(算定区分と点数)、訪問スケジュール(予定・実施・キャンセル)、患者台帳(開始日・終了日・終了理由・住まい・紹介元)、オンコール記録(往診の時間帯)の4つから作ります。手入力で集計表を直接作るのではなく、元データを「1行1患者」「1行1訪問」の形でためておき、集計はすべて関数で行うと、定義のぶれと転記ミスを防げます。Excel でも Google スプレッドシートでも同じ設計で作れます。

シート構成

  1. 患者台帳:1行1患者。患者ID、開始日、終了日、終了理由、居宅・施設の別、施設種別、建物ID、紹介元、要介護度、別に厚生労働大臣が定める状態の該当
  2. 訪問実績:1行1訪問。日付、患者ID、担当医師、種別(訪問診療・往診)、往診の時間帯区分、予定・実施・キャンセルの別、キャンセル理由
  3. 月次集計:1行1か月。基本指標を関数で集計
  4. 判定シート:直近3か月・過去12か月の移動集計で、前章の基準を判定
月次集計の列 集計方法の例 元データ
在籍患者数(月末) 開始日が月末以前、かつ終了日が空欄または月末より後の患者数 患者台帳
訪問診療件数 当月・種別=訪問診療・実施の件数 訪問実績
往診件数(時間帯別) 当月・種別=往診の件数を時間帯区分ごとに 訪問実績
単一建物区分別の患者数 建物IDごとに当月の算定患者数を数え、1人/2〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上に振り分け 患者台帳・レセプト
キャンセル率 当月のキャンセル件数÷(実施件数+キャンセル件数) 訪問実績
過去12か月の緊急往診・看取り件数 当月を含む12か月の移動合計 訪問実績・患者台帳

単一建物診療患者の人数は、建物ごとの「当該医療機関が在医総管・施設総管を算定する者の人数」で判定するため、建物IDを台帳で統一しておくことが前提になります。同じ建物でも入居者の名寄せが甘いと区分を誤るので、新患登録の際に既存の建物IDを選ぶ運用にしておきます。

毎月の運用手順

  1. 月初にレセプトの確定データと訪問実績を取り込む
  2. 患者台帳の開始・終了・終了理由・建物IDを更新する
  3. 月次集計シートの数字を前月・前年同月と比較し、増減の理由をコメント欄に書く
  4. 判定シートで基準を確認し、2・5・8・11月は注14・注16の該当性を記録する
  5. 基準に近づいている項目があれば、院長・事務長で翌月以降の訪問計画を相談する

架空の数値例で読み方を確認する

以下は説明のための架空の数値です。ある在支診(機能強化型以外、常勤換算医師2.0人)の2か月分を比べます。

指標 A月 B月 読み方
在籍患者数(月末) 100人 104人 新規9人-終了5人で4人増
うち施設入居者(割合) 40人(40.0%) 47人(45.2%) 新規9人のうち7人が施設
実患者数 98人 101人 入院中などで訪問がなかった患者を除く
訪問診療件数 190件 186件 患者は増えたのに件数は減少
実患者1人あたり訪問回数 1.94回 1.84回 月1回の患者が増えた可能性
キャンセル率 5.0%(10/200件) 5.1%(10/196件) ほぼ横ばい
医師1人あたり訪問件数 95.0件 93.0件 負荷はやや減少
終了の内訳 - 在宅での死亡3、入院1、転居1 看取り実績に3件加算

この例で見落としやすいのは、新規の施設入居者7人が同じ建物に集中していた場合の影響です。その建物で自院が管理する患者が9人以下から10人以上になると、新規の患者だけでなく、その建物の既存患者も単一建物区分が変わります。前掲の表のとおり、在支診(機能強化型以外)の施設総管・月2回以上(別に定める状態に当たらない患者)は、2〜9人の区分の1,385点から10〜19人の区分では985点になります。在籍患者数が増えても1人あたり点数が下がる典型的なパターンで、構成比を分けて見ていれば、受け入れ時点で影響を説明できます。

読み違えやすいポイント

  • 患者数と収入は比例しない:住まいの区分、単一建物区分、訪問回数区分の構成で単価が大きく変わります。
  • 往診件数と「緊急往診の実績」は別物:施設基準の緊急往診は、往診料の注1に規定する緊急、夜間・休日、深夜の往診を指します。標榜時間内の往診で緊急往診加算の要件に当たらないものは数えません。
  • 訪問回数÷患者数の計算対象:在支診の「12未満」の判定では、別に定める疾病等の患者、死亡した者、期間中に開始・終了した患者などを除いて数えます。単純な全体平均で判断しないようにします。
  • 紹介元の偏り:往診・訪問診療の患者割合が9割5分以上の在支診では、直近1年に5つ以上の医療機関から文書で紹介を受けた実績が要件の一つです。紹介元別の新規患者数は、営業の記録ではなく施設基準の記録でもあります。
  • 「直近3か月」の数え方:基準ごとに対象期間の定義が異なります。判定シートには根拠の条文と期間の定義を一緒に書いておきます。

よくある質問

Q. 1人あたり単価は、在籍患者数と実患者数のどちらで割るべきですか。

A. どちらでも構いませんが、一度決めたら変えないことが重要です。在宅医療では入院中で訪問がない患者が一定数いるため、収入との対応を見るなら当月に訪問した実患者数で割る方が実態に近くなります。在籍患者数で割った値も併記しておくと、入院の増減の影響が見えます。

Q. 施設入居者が増えると経営上不利なのでしょうか。

A. 一概には言えません。施設総管は在医総管より低い区分がある一方、移動の効率は上がります。ただし、往診・訪問診療の患者割合が9割5分以上の在支診や、直近3か月の訪問診療回数が2,100回以上の医療機関では、施設総管を算定する患者の割合が7割以下であることが要件・除外条件の一つになっているため、構成比の確認は欠かせません。

Q. 注16の確認は、いつ何をすればよいですか。

A. 毎年2月・5月・8月・11月に、直近3か月に在宅患者訪問診療料を月2回以上算定した患者の延べ診療月数と、そのうち重症等に当たる割合を計算し、該当性に変更があれば様式19で届け出ます。在医総管等を新たに届け出る際は、最初は基準に該当するものとして差し支えないとされています(疑義解釈その8 問9)。

Q. 管理表は専用のソフトがないと作れませんか。

A. 表計算ソフトで十分作れます。大切なのは、元データを「1行1患者」「1行1訪問」で整え、指標の定義書を1枚作っておくことです。レセプトや電子カルテから出力できる項目を確認し、手入力が必要な項目(終了理由、建物ID、キャンセル理由など)を最小限にします。

まとめ

在宅医療クリニックの経営指標は、「患者数×単価」だけでは読み解けません。管理料は住まい・訪問回数・単一建物の人数で大きく変わり、訪問回数や患者構成は施設基準や減算の判定にも直結します。毎月の基本指標に加えて、直近3か月・過去12か月の判定指標を同じ管理表で追い、2・5・8・11月の確認を定例化しておくと、改定後の新しい基準にも落ち着いて対応できます。まずは患者台帳と訪問実績の元データを整えるところから始めてみてください。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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