在宅医療の新患受付から初回訪問までの流れ|受付票・同意書・保険確認

在宅医療の新患受付から初回訪問までの流れ|受付票・同意書・保険確認

在宅医療の新規依頼は、病院の地域連携室、ケアマネジャー、施設、家族など入口がさまざまで、聞き漏れがあると初回訪問の当日や最初のレセプトで手戻りが起きます。この記事は、訪問診療クリニックの医事担当・相談員・事務長の方に向けて、新患の相談を受けてから初回訪問と関係機関への連絡までを、受付票の項目、保険・公費の確認、同意書と契約、算定ルールとの関係まで含めて一本の流れに整理したものです。

この記事でわかること

  • 新患受付から初回訪問までの標準的な流れと、各段階で決めること
  • 最初の電話で確認すべき「訪問診療の対象になるか」の判断材料
  • 受付票に入れておきたい項目と、その使い道
  • 保険・公費の確認方法(居宅同意取得型のオンライン資格確認を含む)
  • 同意書・契約書類と、ケアマネジャーなど関係機関への連絡のルール

全体の流れ ― 受付から初回訪問まで

まず全体像です。担当者が複数いる医療機関では、各段階の「アウトプット(何ができていれば次へ進めるか)」を決めておくと、引継ぎの抜けが減ります。

段階 主な担当 やること 次へ進む条件(アウトプット)
1. 相談受付 相談員・医事 紹介元・患者の基本情報、依頼の理由を聞く 受付票の基本欄が埋まっている
2. 対象の確認 相談員・医師 通院困難か、訪問エリア内か、他院の在宅医学管理の有無を確認 受け入れ可否の判断
3. 情報収集 相談員 診療情報提供書、退院時の資料、処方、介護サービスの状況を集める 医師が初回の計画を立てられる情報がそろう
4. 保険・公費の確認 医事 医療保険、公費、介護保険の資格と有効期間を確認 請求区分と自己負担の見込みが決まる
5. 契約・同意の準備 医事・相談員 訪問診療の同意書、説明文書、介護保険の重要事項説明書等を用意 初回訪問で署名を受ける書類一式
6. 初回訪問の準備 医師・看護師・医事 訪問日時、持ち物、訪問ルート、単一建物の人数を確認 訪問予定表への登録
7. 初回訪問 医師・看護師 診察、計画の説明、書類の署名・交付 同意書・計画が診療録にそろう
8. 関係機関への連絡 相談員・医師 紹介元への返書、ケアマネジャーへの情報提供、訪問看護・薬局との調整 連絡記録が残っている

最初の電話で確認すること ― 訪問診療の対象になるか

最初の相談で確認しておかないと、後で算定できないことが判明するポイントがあります。留意事項通知(在宅患者訪問診療料・在医総管)から、受付段階で押さえるべきものを抜き出します。

通院が困難な患者か

訪問診療料や在宅時医学総合管理料(以下、在医総管)は、疾病・傷病のために通院による療養が困難な患者が対象です。留意事項通知は、少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院できる者などは通院が容易であり算定できない、と例示しています。「家族が送迎できなくなった」「待合で長時間座れない」など、通院が難しい理由を受付票に具体的に書いてもらうようにします。

訪問できる範囲か

医療機関の所在地と患家の距離が16キロメートルを超える往診・訪問診療は、その医療機関からの訪問を必要とする絶対的な理由がある場合に限り認められ、特に理由がなく患家の希望で16キロメートルを超えて訪問した場合は保険診療として算定できない取扱いです。ここでいう16キロメートル超とは、医療機関を中心とする半径16キロメートルの圏域の外側に患家がある場合を指します。在宅医療のみを実施する医療機関は、在宅医療を提供する地域をあらかじめ定めて周知することが保険医療機関の指定の条件にもなっているため、受付時に住所で機械的に判定できるようにしておくと確実です。

他の医療機関が在宅の医学管理をしていないか

在医総管・施設入居時等医学総合管理料(以下、施設総管)は、主として診療を行っている保険医が属する1つの医療機関で算定するものです。留意事項通知は、他の医療機関が診療を行おうとする場合、患者等への照会などで、他院における在医総管・施設総管の算定の有無を確認することを求めています。前医からの切り替えなのか、専門科の追加依頼なのかで算定の組み立てが変わるため、最初に聞いておきます。

入居している施設の種類

医師の配置が義務付けられている施設の入所者は、給付調整告示等に規定する場合を除き、訪問診療料の算定対象になりません。また、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症対応型共同生活介護事業所などの入居者は在医総管ではなく施設総管の対象です。施設名だけでなく「施設の種別」を聞き取る欄を受付票に設けます。

紹介元からの情報収集と受付票の項目

受付票は「初回訪問で医師が困らない」「最初のレセプトで迷わない」「関係機関に連絡できる」の3つを満たす項目で作ります。私が担当している現場では、記入欄を増やすより「入手先」と「未入手の資料」を見える化した方が、聞き漏れが減りました。

区分 受付票の項目 主な入手先 使い道
基本情報 氏名、生年月日、住所、電話、キーパーソンと続柄・連絡先 紹介元、家族 本人確認、緊急連絡
依頼内容 依頼の理由、通院が困難な理由、希望する開始時期 紹介元 対象の確認、優先度
医療情報 病名、経過、現在の処方、医療機器・医療処置、感染症情報、アレルギー 診療情報提供書、退院時の資料、お薬手帳 初回の計画、持参物品の準備
前医・併診 前医の有無、他院での在宅医学管理の有無、通院中の専門科 紹介元、家族 算定区分の判断、情報提供先
保険・公費 医療保険の種別、公費の種類と有効期間、介護保険の要介護度と負担割合 資格確認、各種受給者証 請求区分、自己負担の説明
介護・生活 担当ケアマネジャー、利用中の介護サービス、訪問看護・薬局 ケアマネジャー 関係機関への連絡、指示書の準備
住まい 居宅か施設か、施設の種別、同じ建物で自院が診ている他の患者の有無、駐車場所、入室方法 家族、施設 在医総管と施設総管の区別、単一建物診療患者数、訪問ルート
意向 療養の希望、急変時・最期の過ごし方についての意向(聞ける範囲で) 本人、家族、紹介元 計画の作成、オンコール時の判断

「同じ建物で自院が診ている他の患者」は見落としやすい項目です。在医総管・施設総管の点数は、患者が住む建築物で自院が医学管理を行う人数(単一建物診療患者の人数)によって区分されるため、新患を受けると、同じ建物の既存患者の区分も変わることがあります。

保険・公費の確認

医療保険の資格確認

保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条は、療養の給付を受ける資格の確認方法として、電子資格確認(マイナ保険証によるオンライン資格確認)と資格確認書の提示などを定めています。在宅医療については、同条第1項第3号で、電子資格確認で確認を受けてから継続的に居宅での療養の給付を受けている患者について、医療機関が過去に取得した資格情報を用いて保険者に照会し、直近の情報を確認する方法も認められています。

訪問先での電子資格確認には「居宅同意取得型」の仕組みを使います。厚生労働省の通知(令和6年3月21日)によると、医療機関では令和6年4月1日から運用が始まっており、職員が持参するスマートフォン・タブレット・汎用カードリーダーを接続したノートPCなどのモバイル端末、または患者のモバイル端末から利用します。オンライン資格確認の管理者画面で「訪問診療等機能」を「利用する」に設定する必要があり、往診で使う場合も同じ機能を利用します。

在宅医療DX情報活用加算と初回訪問
令和8年6月以降の在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の注13に規定する在宅医療DX情報活用加算(届出が必要)は、居宅同意取得型のオンライン資格確認等で得た診療情報等を活用して計画的な医学管理を行うことを評価するものです。留意事項通知では、初回の訪問診療の場合、計画の作成においてあらかじめ診療情報等を活用していないと算定できないとされています(あらかじめ取得していて初回に活用できる場合は初回から算定可)。届出をしている医療機関は、初回訪問より前に同意・取得の段取りを組んでおきます。

公費の確認

  • 生活保護(医療扶助):医療扶助を担当するには生活保護法の指定医療機関である必要があります。資格確認は福祉事務所が発行する医療券のほか、令和6年3月1日からマイナンバーカードを利用したオンライン資格確認も始まっています。
  • 指定難病:特定医療費は、都道府県知事が指定する指定医療機関から受けた医療が対象です(難病法第5条)。受給者証の有効期間と、自院が指定を受けているかを確認します。
  • その他の公費:受給者証の種類・負担者番号・有効期間を控え、更新月を台帳で管理します。

介護保険の確認

要介護・要支援の認定を受けている患者には、医師による居宅療養管理指導(介護保険)が関わります。介護保険の被保険者証で要介護度と有効期間、負担割合証で利用者負担の割合を確認し、担当ケアマネジャーの事業所名・連絡先を控えます。

確認のチェックリスト

  • □ 医療保険の資格を、電子資格確認または資格確認書で確認した
  • □ 居宅同意取得型を使う場合、モバイル端末と「訪問診療等機能」の設定が済んでいる
  • □ 公費の種類・有効期間と、自院がその公費の指定を受けているかを確認した
  • □ 介護保険の要介護度・有効期間・負担割合を確認した
  • □ 他院での在医総管・施設総管の算定の有無を確認した

同意書・契約書類をそろえる

初回訪問で署名・交付する書類は、根拠ごとに整理しておくと漏れがありません。

書類 根拠・ルール ポイント
訪問診療に係る同意書 留意事項通知:訪問診療を実施する場合、患者またはその家族等の署名付きの同意書を作成して診療録に添付 署名者と日付の記入漏れに注意
在宅療養計画 留意事項通知:個別の患者ごとに総合的な在宅療養計画を作成し、患者・家族等に説明し、計画と説明の要点を診療録に記載 説明した相手と日付を記録
24時間の連絡体制の説明文書(在支診) 在支診が在医総管の「1」「2」を算定できるのは、連絡担当者の氏名・連絡先電話番号等・担当日・緊急時の注意事項等と、往診担当医・訪問看護担当者の氏名等を文書で提供している患者に限られる 交付漏れは算定区分の誤りにつながる
居宅療養管理指導の重要事項説明書と同意 指定居宅サービス等の運営基準:提供開始に際し、運営規程の概要等の重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得る(居宅療養管理指導に準用) 介護保険の利用者負担の説明を含める
個人情報の利用目的の説明 個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンス:医療の提供に必要な範囲の利用目的を院内掲示等で公表し、患者から留保の意思表示がなければ黙示の同意があったと考えられる 在宅では院内掲示を見る機会がないため、書面で渡すと確実
費用の説明 往診料・訪問診療料の注:往診・訪問診療に要した交通費は患家の負担(実費、自家用車による費用を含む) 交通費の算定方法を書面で示す

ガイダンスでは、患者への医療の提供のために他の医療機関等と連携を図ること、他の医療機関等からの照会に応じること、家族等への病状説明などが利用目的として特定されていれば、これらも同意があったものと考えられるとしています。訪問看護ステーションや薬局、ケアマネジャーとの情報共有を利用目的として明示しておくと、開始後のやり取りがスムーズです。

初回訪問の準備と当日の記録

算定ルールを踏まえて訪問日を決める

  • 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)は、初診料を算定する初診の日には算定できません。初回訪問をどう算定するかは訪問の経緯によって変わるため、レセプト担当と事前にすり合わせておきます。
  • 在医総管・施設総管は、月の訪問回数(月1回か月2回以上か)と単一建物診療患者の人数で区分が決まります。初回の月の訪問予定を、既存の訪問ルートと合わせて組みます。
  • 退院後に在宅療養を始めた患者は、在宅移行早期加算(在医総管の算定開始月から3月以内、月1回)の対象になり得ますが、退院から1年を経過した患者には算定できません。退院日を受付票に記録しておきます。

当日に記録すること

留意事項通知は、訪問診療を実施する場合、訪問診療の計画と診療内容の要点、訪問診療を行った日の診療時間(開始時刻と終了時刻)と診療場所を診療録に記載するよう求めています。初回は書類の説明に時間がかかるため、診療時間と説明の時間を混同しないよう、記録の書き方を事前に決めておきます。

初回訪問の持ち物チェックリスト

  • □ 同意書、在宅療養計画、24時間連絡体制の説明文書、重要事項説明書、個人情報の説明文書
  • □ 居宅同意取得型で使うモバイル端末
  • □ 受付票と紹介元の資料(診療情報提供書、処方内容)
  • □ 受給者証等の写しを取るための用意
  • □ 訪問看護指示書など、開始当日に必要になる書類の様式

関係機関への連絡

初回訪問が終わったら、その週のうちに関係機関へ連絡します。特に介護保険との関係では、次のルールが重要です。

  • ケアマネジャーへの情報提供:医師の居宅療養管理指導は、ケアマネジャーに対するケアプランの作成等に必要な情報提供と、利用者・家族等への介護サービスを利用するうえでの留意点等の指導・助言を行った場合に算定するもので、留意事項通知(老企第36号)は、ケアマネジャーへの情報提供がない場合は算定できないと明記しています。情報提供はサービス担当者会議への参加が基本で、参加が困難な場合などは別紙様式等(メール・FAXでも可)で行い、写しを診療録に添付する等で保存します。
  • 在医総管との関係:同じ月に医療保険で在医総管または施設総管を算定した場合、その医師が算定する居宅療養管理指導費は(Ⅱ)になります。
  • 訪問看護:訪問看護を利用する場合は指示書を交付し、緊急時の連絡ルール(どちらが先に受けるか、医師への報告方法)をすり合わせます。
  • 紹介元:初回訪問の結果と今後の方針を返書で伝えます。
  • 末期の悪性腫瘍の患者:在医総管の留意事項では、医学的に末期と判断した段階で、ケアマネジメントを担当する介護支援専門員に、予後や今後想定される病状の変化、必要となるサービス等を適時情報提供することとされています。

よくある質問

Q. 訪問診療の同意書は、家族の署名でもよいですか。

A. 留意事項通知は「当該患者又はその家族等の署名付の訪問診療に係る同意書」を作成して診療録に添付するとしています。家族等が署名する場合は、続柄と署名日を記入してもらい、本人の意思確認の状況も診療録に残しておくとよいでしょう。

Q. マイナ保険証での資格確認は、訪問のたびに必要ですか。

A. 療担規則第3条第1項第3号により、電子資格確認で確認を受けてから継続的に居宅での療養を受けている患者は、医療機関が過去に取得した資格情報で保険者に照会し、直近の情報を確認する方法が認められています。初回に居宅同意取得型で確認しておくことが前提になります。

Q. ケアマネジャーに情報提供していなかった月の居宅療養管理指導は算定できますか。

A. 留意事項通知(老企第36号)は、ケアマネジャーへの情報提供がない場合は算定できないと明記しています。サービス担当者会議に参加できない月は、様式等による情報提供を行い、その写しを保存してください。

Q. 施設に入居している患者の受付で、特に注意することは何ですか。

A. 施設の種別(医師の配置義務の有無、施設総管の対象施設か)と、同じ建物で自院が診ている患者数を必ず確認します。前者は算定の可否と管理料の種類に、後者は単一建物診療患者数の区分に影響します。

まとめ

新患受付から初回訪問までの流れは、「対象の確認」「情報収集」「保険・公費の確認」「同意・契約」「初回訪問」「関係機関への連絡」の順に、各段階のアウトプットを決めておくと安定します。通院困難の理由、訪問エリア、他院での在宅医学管理の有無、施設の種別、同じ建物の患者数は、最初の電話で聞いておくべき項目です。署名付きの同意書、在宅療養計画の説明、24時間連絡体制の文書、介護保険の重要事項説明、ケアマネジャーへの情報提供は、いずれも算定や運営基準に直結します。受付票と書類一式を一度テンプレート化し、担当者が変わっても同じ品質で受け入れられるようにしておきましょう。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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