在宅医療の月次請求フロー|訪問実績の確定から返戻対応までのチェックリスト

在宅医療の月次請求フロー|訪問実績の確定から返戻対応までのチェックリスト

在宅医療の請求は、外来と比べて「月末にならないと決まらないこと」が多い仕事です。在宅時医学総合管理料の区分は月の訪問回数と建物の人数で変わり、介護保険の居宅療養管理指導は医療保険とは別の締切で国保連へ請求します。この記事では、訪問診療を行う診療所の医事担当者向けに、訪問実績の確定からカルテ記載の確認、レセプト作成、点検、提出、返戻対応までを1か月の流れとして整理し、そのまま使えるチェックリストを付けました。

この記事でわかること

  • 医療保険と介護保険の請求締切(どちらも翌月10日)と、オンライン請求の受付時間
  • 月末に確定させるべき訪問実績と、レセプト前に確認するカルテ記載
  • 令和8年度の記載要領で在医総管の摘要欄に求められる記載事項
  • 受付・事務点検ASP、返戻ファイル、増減点連絡書の使い方
  • 担当者がそのまま使える月次チェックリスト

全体像:締切は医療・介護とも「翌月10日」

在宅医療を行う診療所は、通常2系統の請求を毎月行います。

  • 医療保険(診療報酬):訪問診療料、在宅時医学総合管理料(在医総管)、往診料、在宅療養指導管理料など。「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」第2条で、各月分を翌月10日までに請求すると定められています。提出先は、被用者保険などは社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険・後期高齢者医療は国保連です。
  • 介護保険(介護給付費):医師の居宅療養管理指導費など。「介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令」第3条で、各月分を翌月10日までに国保連へ請求すると定められています。

社会保険診療報酬支払基金は、医療法等の一部を改正する法律に基づき、2026年10月に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」(DX審査支払機構)へ改組されました。オンライン請求の案内ページも新しいドメイン(hpdx.or.jp)に移っています。院内マニュアルやブックマークに古い名称・URLが残っていないか、この機会に見直しておくとよいでしょう。

1か月の流れを表にすると、次のようになります。オンライン請求の時間帯は、審査支払機関が公表している「オンライン請求システムの稼働時間等」によるものです(土日祝を含み、年末年始の12月29日〜1月3日は運用なし)。

時期 医療保険(在宅医療) 介護保険(居宅療養管理指導)
当月中 訪問のたびにカルテ記載(診療時間・場所など)。往診・入院・死亡などのイベントを記録 指導・助言の記録、ケアマネジャーへの情報提供
月末〜翌月初 訪問実績の確定、在医総管の区分と単一建物診療患者数の確定、レセプト作成、院内点検 (Ⅰ)(Ⅱ)と単一建物居住者の区分の確定、明細書作成
翌月5日〜10日 オンライン請求の受付(5〜7日は8時〜21時、8〜10日は8時〜24時) 翌月10日までに国保連へ請求(伝送の受付期間・時間は各国保連の案内を確認)
翌月5日〜12日 受付・事務点検ASPの結果を見て訂正できる期間 —
審査後 返戻ファイル・増減点連絡書をダウンロード(毎月5日〜月末)し、再請求・再審査等請求 審査結果を確認し、返戻は再請求、支払決定後の誤りは保険者へ過誤申立て
診療の翌々月 診療報酬の支払 —

ステップ1:訪問実績を月末に確定する

在宅医療のレセプトは、訪問の「回数」「同じ日に同じ建物で何人診たか」「月に何人を管理しているか」で点数が変わります。まず訪問予定表と実際の訪問記録を突き合わせ、次の項目を患者ごとに確定させます。

  • 訪問診療か往診か:定期的・計画的な訪問が訪問診療、患者や家族の求めに応じた臨時の訪問が往診です。訪問診療を行っている期間に緊急で往診した日は、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)は算定せず、往診料と再診料等を算定します(令和8年度 留意事項通知 C001(11))。
  • 同一建物居住者かどうか(日単位):在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「同一建物居住者」は、同じ建物の複数の患者に同一日に訪問診療を行う場合を指します(同 C001(3))。同居する同一世帯の複数の患者を診た場合などは、1人目は「同一建物居住者以外」、2人目以降は初診料・再診料等と特掲診療料のみを算定します(同 C001(5))。
  • 単一建物診療患者数(月単位):在医総管・施医総管の区分に使う人数で、その建物で在医総管・施医総管を算定する人数(特別の関係にある医療機関で算定する人を含む)です(同 C002(4))。日単位の同一建物居住者とは別に数えます。
  • 月の訪問回数:在医総管・施医総管は、訪問診療料(Ⅰ)の「1」などを月2回以上算定したか、月1回かで区分が変わります(同 C002(4))。
  • 月中のイベント:入院、退院、死亡、転居、施設入所、要介護認定の結果、保険の切り替えなど。区分や算定の可否に直結するので、日付と一緒に一覧にしておきます。

在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「1」は、原則として患者1人につき週3回が限度です(別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者を除く)。急性増悪などで一時的に週4回以上訪問した場合は、必要性・必要を認めた日・訪問日を明細書に記載したうえで、月1回、14日を限度に算定できます(令和8年度 医科点数表 C001 注1・注3、留意事項通知 C001(9)(10))。実績の確定段階で、週3回を超えている患者を抽出しておくと点検が楽になります。

ステップ2:レセプトの前にカルテ記載を確認する

請求できるかどうかは、カルテに要件を満たす記載があるかで決まります。令和8年度の留意事項通知で確認できる、在宅医療の主な記載要件は次のとおりです。

  • 訪問診療(C001(12)):患者または家族等の署名付きの訪問診療の同意書を作成して診療録に添付する。訪問診療の計画と診療内容の要点を記載する。訪問診療を行った日の診療時間(開始時刻と終了時刻)と診療場所を記載する
  • 在医総管・施医総管(C002(5)):患者ごとに総合的な在宅療養計画を作成し、患者・家族等への説明の要点とあわせて診療録に記載する
  • 在宅ターミナルケア加算・看取り加算(C001(14)(18)):診療内容の要点等を診療録に記載する
  • 居宅療養管理指導(介護保険):ケアマネジャーへの情報提供の記録(会議参加の要点、または文書の写し)と、利用者・家族への指導・助言の要点

医事担当者がカルテの医学的な中身を判断する必要はありません。ただ、「開始・終了時刻が空欄」「同意書のスキャンがない」「計画書の更新が止まっている」といった形式面の抜けは、請求前に見つけて医師に戻す仕組みにしておくと、個別指導などで指摘を受けるリスクも下げられます。

ステップ3:レセプトを作成する(摘要欄の記載事項)

令和8年6月1日から適用されている「診療報酬請求書等の記載要領」(別表Ⅰ)では、在宅医療の主な項目に次の記載が求められています。レセコンの入力漏れが返戻につながりやすい部分です。

項目 摘要欄等に記載する主な事項
在医総管・施医総管 当該月に往診または訪問診療を行った年月日。情報通信機器を用いた診療を行った場合はその年月日。単一建物診療患者が2人以上の場合はその人数。戸数の10%以下・20戸未満で2人以下・3ユニット以下のグループホームの特例を使う場合は該当するもの
在医総管等の包括的支援加算 留意事項通知に規定する状態(要介護3以上、認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅢ以上など)のうち該当するもの
在医総管等の在宅移行早期加算 初回の当該管理料を算定した年月日
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の週4回以上の算定 頻回な訪問診療の必要性、必要を認めた年月日、訪問診療を行った年月日
訪問診療と同一日の往診料 患者の病状の急変等、往診が必要となった理由
在宅ターミナルケア加算 死亡年月日。在宅以外で死亡した場合などは、死亡前24時間以内に行った訪問診療の年月日・時刻

また、記載要領では、在医総管・施医総管を算定した場合は「その他」の項に名称を記載し、在宅移行早期加算や頻回訪問加算、包括的支援加算などを算定した場合は名称と点数を記載することとされています。

資格の確認方法も、レセプトの正しさを左右します。保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第3条では、資格確認の方法として、電子資格確認、資格確認書のほか、在宅医療で継続的に療養している患者について「再照会」による確認が認められています。訪問診療の居宅同意取得型のオンライン資格確認では、初回訪問から3か月を経過する日の属する月の末日まで再照会が使え、それ以降も続けるには、毎月診療が続いていることがレセプト請求の審査結果から確認できる必要があります(令和6年3月21日 保連発0321第1号・保医発0321第9号)。この通知は、月遅れ請求をすると継続的な関係が確認できない場合があるとも注意しています。請求漏れを翌月以降に回すと、再照会にも影響しうるということです。

ステップ4:点検する(院内点検と受付・事務点検ASP)

点検は「院内の目視点検」と「審査支払機関の事務点検」の二段構えにします。

院内点検で見るポイント

  • 訪問実績表の回数・日付と、レセプトの訪問診療料の回数・算定日が一致しているか
  • 在医総管の「月2回以上/月1回」と単一建物診療患者数の区分が、ステップ1の確定値と一致しているか
  • 在医総管を算定した月に、所定点数に含まれる項目(特定疾患療養管理料、在宅寝たきり患者処置指導管理料、創傷処置、喀痰吸引、訪問看護指示料の衛生材料等提供加算など)を別に算定していないか(留意事項通知 C002(9))
  • 在宅療養指導管理料を2つ以上算定していないか(主たるもののみ算定。医科点数表 第2章第2部第2節第1款 通則)
  • 訪問看護指示料が月1回を超えていないか(特別訪問看護指示加算は月1回、別に厚生労働大臣が定める者は月2回)
  • 公費(難病、生活保護など)の負担者番号・受給者番号が、受給者証・医療券と一致しているか
  • 介護保険の居宅療養管理指導(Ⅰ)(Ⅱ)が、医療側の在医総管の有無と整合しているか

受付・事務点検ASP

オンライン請求では、受付・事務点検ASPを使うと、患者氏名の記録漏れなどの事務的な誤りを提出前に確認できます。案内によると、ASPの結果を見て訂正できる期間は毎月5日〜12日で、資格関係のエラーはWeb上でレセプトデータを訂正する機能もあります。10日に駆け込みで送信すると訂正の余裕がなくなるため、可能なら5〜7日の早い時期に一度送信し、ASPの結果を確認する運用をおすすめします。

ステップ5:提出と介護給付費の請求

医療保険はオンライン請求で翌月10日までに送信します。介護保険の居宅療養管理指導は、介護給付費明細書を作成して国保連に伝送します。介護側で間違えやすい点は次のとおりです(令和6年6月版「介護給付費請求書等の記載要領」)。

  • 居宅療養管理指導だけを請求する場合、「居宅サービス計画」欄は記載しない
  • 請求額集計欄の「計画単位数」は、居宅療養管理指導では記載不要
  • 「サービス実日数」は、居宅療養管理指導のために利用者の居宅を訪問した日数
  • 摘要欄には、算定回数に応じて訪問日等を記載する(複数あるときは半角カンマで区切る)

居宅療養管理指導の算定日は「当該月の訪問診療又は往診を行った日」とされているので、医療保険のレセプトの訪問日と介護の摘要欄の日付は必ず一致するはずです。両者を突き合わせるだけで、多くの転記ミスを防げます。

審査結果の受け取りと、返戻・査定への対応

審査の結果は「返戻」と「査定(増減点)」に分かれます。対応方法が違うので、分けて管理します。

  • 返戻:レセプトが差し戻されたもの。オンライン請求の医療機関は、返戻レセプトをCSV形式の返戻ファイルでダウンロードし、レセコンに取り込んで修正し、オンラインで再請求します。審査支払機関からの紙の返戻の送付は令和6年9月末で終了するとされ、紙のみで送られてくる返戻(紙レセプトで請求した分など)以外は、返戻ファイルでの再請求が基本です。審査支払機関は、再請求のレセプトを新しく作り直さず、必ず返戻ファイルを使って作成するよう求めています。作り直した一次請求のファイルを使うと返戻の履歴が確認できず、すでに査定された診療行為が再び請求される事象が起きているためです。
  • 査定(増減点):審査で点数が増減されたもの。増減点連絡書はPDFでオンライン配信され、CSVデータも提供されています。内容に異議がある場合は再審査等請求を行います。方法は紙の再審査等請求書か、オンラインの再審査等請求ファイルです(訪問看護ステーションは紙のみ)。
  • 介護保険:国保連の審査で返戻されたものは、修正して再請求します。支払決定後に誤りが見つかった場合は、保険者に過誤申立てをして取り下げてから再請求します。過誤申立ての締切・様式・提出方法は保険者ごとに異なります。

返戻・査定の内容は、件数と理由を毎月記録しておくと、翌月以降の点検項目の見直しに使えます。同じ理由の返戻が続くときは、レセコンのマスタ設定や入力ルールに原因があることが多いからです。

在宅医療の月次請求チェックリスト(担当者用)

【月末〜翌月初:実績の確定】

  • □ 訪問予定表と訪問記録を突き合わせ、訪問診療・往診を区別した
  • □ 日ごとの同一建物居住者、月ごとの単一建物診療患者数を確定した
  • □ 在医総管の「月2回以上/月1回」を確定した
  • □ 週3回を超える訪問診療の患者を抽出し、算定要件と記載を確認した
  • □ 入院・死亡・転居・保険変更・認定結果などのイベントを日付つきで一覧にした

【カルテ記載】

  • □ 訪問診療の同意書(署名付き)が添付されている
  • □ 訪問日ごとに診療時間(開始・終了)と診療場所が記載されている
  • □ 在宅療養計画と説明の要点が記載されている
  • □ 居宅療養管理指導の情報提供・指導助言の記録がある

【レセプト作成・点検】

  • □ 在医総管の摘要欄(訪問日、2人以上の場合の人数、特例の選択、包括的支援加算の状態)を入力した
  • □ 在医総管に含まれる項目、在宅療養指導管理料の重複を除いた
  • □ 公費の負担者番号・受給者番号を受給者証・医療券と照合した
  • □ 医療の訪問日と、介護の居宅療養管理指導の算定日が一致している
  • □ 5〜7日に一度送信し、ASPの結果を確認した(訂正は12日まで)

【提出後】

  • □ 医療・介護とも翌月10日までに送信が完了した
  • □ 返戻ファイル・増減点連絡書をダウンロードし、理由を記録した
  • □ 返戻は返戻ファイルから修正して再請求した(新規作成しない)
  • □ 介護の支払決定後の誤りは、保険者の手順で過誤申立てをした

よくある質問

Q. 10日を過ぎてしまったレセプトはどうなりますか?

A. 請求命令では各月分を翌月10日までに請求すると定めています。間に合わなかった分は、翌月以降の請求として提出する(いわゆる月遅れ請求)ことになりますが、入金が遅れるうえ、在宅の居宅同意取得型オンライン資格確認では、月遅れ請求によって継続的な関係が確認できない場合があると通知されています。締切前の数日を点検に使えるよう、月初の作業を前倒しするのが基本です。

Q. 返戻されたレセプトを、レセコンで作り直して出してもよいですか?

A. 審査支払機関は、再請求のレセプトは新たに作成せず、必ず返戻ファイル(再審査等返戻の場合は再審査等返戻ファイル)を使って作成するよう求めています。作り直すと返戻の履歴が確認できなくなるためです。返戻ファイルの取り込み・修正の方法はレセコンの機種によって違うので、操作手順書で確認してください。

Q. 査定に納得できない場合は、どうすればよいですか?

A. 再審査等請求を行います。紙の再審査等請求書のほか、オンラインで再審査等請求ファイルを作成して送信する方法があります。理由を具体的に書けるよう、カルテの該当箇所や当時の状態を確認したうえで申し出ます。

Q. 介護保険の居宅療養管理指導も、医療保険と同じ審査支払機関に出すのですか?

A. 介護給付費の審査支払は国保連が行います。医療保険の請求先(被用者保険分の審査支払機関や国保連の医療保険部門)とは別に、介護給付費として国保連に請求します。締切はどちらも翌月10日です。

まとめ

在宅医療の月次請求は、①月末に訪問実績と人数を確定する、②カルテの記載要件を確認する、③記載要領に沿って摘要欄を入力する、④院内点検とASPで二重に確認する、⑤翌月10日までに医療・介護それぞれを提出する、⑥返戻・査定を記録して次月に活かす、という流れで回すと安定します。特に、日単位の「同一建物居住者」と月単位の「単一建物診療患者数」を分けて管理すること、医療の訪問日と介護の算定日を突き合わせることの2つは、手間のわりに効果が大きい点検です。2026年10月には支払基金が改組されて名称とURLが変わっているので、マニュアル類もあわせて更新しておきましょう。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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