在宅時医学総合管理料(在医総管)と施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の点数は、「単一建物診療患者」の人数によって大きく変わります。同じ患者でも、同じ建物で何人を管理しているかによって、点数が半分近くになることもあります。それだけに、数え方の誤りは毎月の請求に直接響き、気づかないまま続くと影響が大きくなります。
この記事では、在宅医療の請求を担当する医事担当の方に向けて、単一建物診療患者の数え方を、令和8年度(2026年度)改定後の告示・留意事項通知の文言に沿って整理し、訪問診療料の「同一建物居住者」との違い、よくある誤り、月次の点検方法までをまとめます。
この記事でわかること
- 単一建物診療患者の定義と、点数への影響の大きさ
- 「同じ建物」「同じ月」「算定する患者」「特別の関係」という4つの原則
- 同居家族、建物の戸数、認知症グループホームのユニットに関する例外
- 訪問診療料の「同一建物居住者」との違い
- よくある誤りと、毎月の点検手順
単一建物診療患者とは何か
告示(医科点数表)では、在医総管の注1で、単一建物診療患者を「当該患者が居住する建物に居住する者のうち、当該保険医療機関が訪問診療を実施し、医学管理を行っているもの」と定めています。留意事項通知はこれをさらに具体的にして、「当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険医療機関が在医総管又は施設総管を算定する者(当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関において算定するものを含む。)の人数」としています。
人数の区分は「1人」「2人以上9人以下」「10人以上19人以下」「20人以上49人以下」「それ以外(50人以上)」の5段階です。たとえば、在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)のうち機能強化型以外の医療機関が在医総管を算定する場合、2026年6月以降の告示の点数は次のとおりです。
| 訪問回数 | 1人 | 2〜9人 | 10〜19人 | 20〜49人 | 50人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月2回以上 | 3,685点 | 1,985点 | 985点 | 875点 | 745点 |
| 月1回 | 2,285点 | 1,265点 | 665点 | 570点 | 490点 |
1人と2人以上の境目で点数がほぼ半分になり、10人の境目でもさらに大きく下がります。境目付近の建物ほど、1人の数え違いが請求額を大きく動かすことがわかります。
数え方の4つの原則
原則1:「建物」単位で数える
通知は「当該患者が居住する建築物」と表現しています。敷地や運営法人の単位ではなく、建物ごとに数えるのが前提です。文言に沿って読むと、同じ法人が運営する施設でも別の建物であれば別に数え、反対に1つの建物の中に有料老人ホームの居室と一般の住戸が混在していれば、建物としては1つとして数えることになります。複数の棟が渡り廊下でつながっているなど、1つの建築物かどうか判断に迷う構造の場合は、先に管轄の地方厚生局に確認しておくと安全です。
原則2:その月に管理料を算定する患者を数える
在医総管・施設総管は月1回の管理料です。通知の定義は「算定する者の人数」なので、その建物で当月に自院が在医総管または施設総管を算定する患者の数が基準になります。在医総管の患者と施設総管の患者は「又は」でつながっているため、同じ建物に両方がいる場合は合算します。
原則3:往診だけの患者や他院の管理患者は含めない
臨時の往診だけで管理料を算定していない患者や、他の医療機関が在医総管等を算定している患者は、通知の定義上、自院の単一建物診療患者には入りません。数に入れてしまうと、本来より低い区分で請求することになります。
原則4:特別の関係にある医療機関の患者は合算する
通知の定義には「当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関において算定するもの」が含まれています。同じ建物で、自院と特別の関係にある医療機関がそれぞれ患者を管理している場合は、両方の算定患者を合わせた人数で区分を決めます。
「特別の関係」は留意事項通知で定義されており、主に次のような関係を指します。
- 開設者が同一
- 代表者が同一
- 代表者同士が親族等
- 役員等のうち、相手方の役員等の親族等が占める割合が10分の3を超える
- 人事・資金等を通じて相手方の経営方針に重要な影響を与えることができる
系列のクリニックや分院がある場合は、どの医療機関が「特別の関係」に当たるかを一覧にしておき、建物ごとの算定患者数を毎月やり取りする仕組みが必要です。
数え方の例:ある有料老人ホーム(1棟)で、自院が施設総管を算定する患者が7人、特別の関係にある別の診療所が施設総管を算定する患者が4人いるとします。自院だけを見れば「2〜9人」ですが、定義どおり合算すると11人となり、両院とも「10〜19人」の区分になります。在支診・在支病のうち機能強化型以外の医療機関で月1回の場合、施設総管は「2〜9人」が905点、「10〜19人」が665点(いずれも2026年6月以降)なので、1人当たりの差は240点です。合算を忘れると、本来より高い点数で請求を続けることになります。
例外として「1人」などとみなせる場合
通知には、人数の数え方の例外がいくつか定められています。対象となる管理料が異なる点に注意してください。
| 例外 | 扱い | 対象 |
|---|---|---|
| 1つの患家に同居する同一世帯の患者が2人以上 | 患者ごとに「単一建物診療患者が1人の場合」を算定 | 在医総管・施設総管 |
| 建物で管理する患者数が、その建物の戸数の10%以下 | それぞれ「1人の場合」を算定 | 在医総管 |
| 建物の戸数が20戸未満で、管理する患者が2人以下 | それぞれ「1人の場合」を算定 | 在医総管 |
| ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所 | ユニットごとの施設総管の算定人数を単一建物診療患者数とみなすことができる | 施設総管 |
具体的に考えてみます。
- 100戸の集合住宅で自院が在医総管を算定する患者が8人:戸数の10%以下なので、8人それぞれ「1人の場合」で算定します。
- 15戸の集合住宅で2人:20戸未満かつ2人以下なので「1人の場合」。3人になると例外から外れ「2〜9人」の区分です。
- 2ユニットのグループホームで各ユニット8人:ユニットごとにみなせるため、それぞれ「2〜9人」の区分です。建物全体の16人で数えると「10〜19人」になるので、差は大きくなります。
- 4ユニット以上のグループホーム:ユニットごとのみなしは使えないため、建物全体の人数で数えます。
戸数の例外を使うには、建物の戸数を把握している必要があります。管理会社や施設に確認し、確認日とともに記録しておきましょう。
境界の数字で迷いやすい点
例外の判定は、文言の「以下」「未満」をそのまま当てはめると整理しやすくなります。
- 「戸数の10%以下」は10%ちょうどを含みます。40戸で4人なら10%なので「1人の場合」、5人なら12.5%で例外から外れます。
- 「20戸未満」は19戸までです。20戸の建物は「20戸未満で2人以下」の例外には当たりませんが、2人であれば10%なので、10%以下の例外で「1人の場合」になります。3人なら15%で、どちらの例外にも当たりません。
- グループホームの「ユニット数が3以下」は3ユニットを含みます。また通知は「みなすことができる」と書いているため、ユニットごとに数えるか建物全体で数えるかを判断した結果を、集計表に残しておくと後から説明しやすくなります。
こうした境界の判定は、患者が1人増減しただけで結果が変わります。月の途中で入居や退去があった建物は、月末の集計時に必ず再判定してください。
訪問診療料の「同一建物居住者」との違い
在宅医療の請求で特に混同しやすいのが、在宅患者訪問診療料の「同一建物居住者」です。名前は似ていますが、数える単位も対象も違います。
| 観点 | 単一建物診療患者(在医総管・施設総管) | 同一建物居住者(訪問診療料) |
|---|---|---|
| 数える単位 | 月 | 日(同一日に訪問診療を行うか) |
| 数える対象 | 当月に在医総管・施設総管を算定する患者(特別の関係にある医療機関の分を含む) | 同じ建築物に住み、同じ日に訪問診療を行う複数の患者 |
| 区分 | 1人/2〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上 | その日に1人だけか、2人以上か |
| 数から除く患者 | 例外規定(同居家族・戸数・ユニット)で調整 | 往診を実施した患者、末期の悪性腫瘍と診断した後に訪問診療を始めた日から60日間の患者、死亡日とその前29日間の患者 |
| 同居家族 | 患者ごとに「1人の場合」 | 同一患家で2人以上診療した場合、2人目以降は初診料・再診料等と特掲診療料のみ |
つまり、ある日に同じ建物で1人しか訪問しなかったため訪問診療料が「同一建物居住者以外」になった患者でも、その月の管理料は建物全体の算定患者数で区分を決めます。日ごとの訪問人数で管理料の区分を決めてしまうのは典型的な誤りです。
訪問看護療養費の側では、令和8年度改定で同一建物居住者に同一敷地内が含まれることになり、疑義解釈(その1・訪問看護療養費関係)でその範囲が示されています。一方、医科の訪問診療料や在医総管・施設総管の留意事項通知の文言は「建築物」のままです。訪問看護ステーションと人数の情報をやり取りする際は、どの制度の数え方なのかを明示しておくと混乱を防げます。
よくある誤り
- その日の訪問人数(同一建物居住者)で管理料の区分を決めている
- 往診だけの患者や、他院が管理料を算定している患者を人数に入れている
- 特別の関係にある医療機関が同じ建物で管理している患者を数えていない
- 同じ建物の在医総管の患者と施設総管の患者を別々に数えている
- 4ユニット以上のグループホームにユニットごとのみなしを使っている
- 戸数の例外(10%以下、20戸未満で2人以下)を施設総管に使っている
- 同居する夫婦を2人として数え、「2〜9人」で算定している
- 転居した患者の建物情報を更新せず、旧住所の建物で数えている
毎月の点検手順
単一建物診療患者数は、レセコンの機能だけに任せず、建物の情報を事務側で管理するのが確実です。次の手順で月次点検を組み立てると、抜けが減ります。
- 建物マスタを作る:建物名、所在地、建物の種別(戸建て・集合住宅・有料老人ホーム・サ高住・グループホーム等)、戸数、グループホームはユニット数とユニット名を登録します。
- 患者を建物に紐づける:新規受入れ時と転居時に必ず更新します。グループホームはユニットまで紐づけます。
- 特別の関係にある医療機関と人数を共有する:該当する医療機関がある場合、建物ごとの当月算定予定者数を月末に受け取る段取りを決めておきます。
- 当月の算定予定者を建物ごとに集計する:往診のみの患者、当月は管理料を算定しない患者を除き、在医総管と施設総管を合算します。
- 例外を判定する:同居する同一世帯、戸数の10%以下、20戸未満で2人以下、3ユニット以下のグループホームに当たるかを確認します。
- 区分を決めてレセプトと照合する:決めた区分と、レセプトに載っている点数が一致しているかを確認します。
- 前月との差を確認する:人数区分が前月から変わった建物は、入居・退去・入院・死亡などの理由を確認し、判断の根拠をメモに残します。
月次集計表のひな形
Excel や Google スプレッドシートで、建物ごとに1行の集計表を作っておくと、点検と引継ぎが楽になります。列の例は次のとおりです。
| 列 | 入れる内容 | 点検のポイント |
|---|---|---|
| 建物名・所在地 | 建物マスタから転記 | 転居した患者が旧建物に残っていないか |
| 建物の種別 | 集合住宅、有料老人ホーム、サ高住、グループホーム等 | 在医総管と施設総管の取り違えがないか |
| 戸数・ユニット数 | 戸数(集合住宅)、ユニット数(グループホーム) | 例外判定に使う値が最新か |
| 自院の算定者数 | 当月に在医総管・施設総管を算定する患者数 | 往診のみの患者を含めていないか |
| 特別の関係にある医療機関の算定者数 | 相手方から受け取った人数 | 受け取り漏れがないか |
| 合計と適用した例外 | 合計人数、同居家族・戸数・ユニットの例外の適用有無 | 例外の対象管理料を取り違えていないか |
| 決定した区分・前月の区分 | 1人、2〜9人など | 区分が変わった理由をメモしたか |
この表をレセプト点検の前に完成させ、レセプトに出ている管理料の区分と1件ずつ照合するのが基本の流れです。担当者が替わっても同じ手順で確認できるよう、判断に迷った事例と結論も同じファイルに残しておくと役立ちます。
単一建物の区分はほかの要件にも使われる
単一建物診療患者の区分は、管理料の点数を決めるだけではありません。たとえば、在医総管の注14(施設総管にも準用)は「10人以上」の区分を対象に、訪問診療回数等の基準を満たさない場合の減算を定めています。また、在宅医療充実体制加算の施設基準のうち「医師1人当たりの訪問診療患者数100人以下」の計算では、単一建物診療患者が2人以上の場合の点数を算定する患者を、70人を上限に1人を0.5人とみなして数えることができます(疑義解釈その4でも確認されています)。建物マスタと月次集計を整えておくことは、これらの施設基準の確認にもそのまま役立ちます。
よくある質問
Q. 訪問診療はしているが、在医総管を算定していない患者は数に入りますか?
A. 留意事項通知の定義は「在医総管又は施設総管を算定する者の人数」です。この定義に照らすと、当月に自院が管理料を算定しない患者は数えません。算定しない理由(他院が算定している等)は記録しておくと、後から説明しやすくなります。
Q. 同じ建物で、特別の関係にある別のクリニックも患者を診ています。どう数えますか?
A. 通知の定義では、特別の関係にある医療機関が算定する患者も含めて数えます。両院の算定患者を合わせた人数で、それぞれの医療機関の区分を決めることになります。
Q. 月の途中で入院や死亡があった患者はどう扱いますか?
A. 通知には月途中の変動について個別の規定は見当たりません。定義は「当月に管理料を算定する者の人数」なので、その患者について当月に管理料を算定するかどうかを先に確定させてから人数を数えるのが、定義に沿った手順です。個別の事例で判断に迷う場合は、管轄の地方厚生局に確認してください。
Q. 戸数が分からない集合住宅はどうすればよいですか?
A. 戸数の例外(10%以下、20戸未満で2人以下)は在医総管の点数に影響するため、戸数を把握しないまま「1人の場合」で算定するのは避けてください。管理会社や施設に確認し、確認日とともに建物マスタに記録しておくことをおすすめします。
まとめ
単一建物診療患者数は、「同じ建物」「その月」「管理料を算定する患者」「特別の関係にある医療機関の分も合算」という4つの原則で数え、同居家族・戸数・グループホームのユニットの例外を当てはめて決めます。訪問診療料の同一建物居住者とは単位も対象も違うため、日ごとの訪問人数と混同しないことが最大のポイントです。建物マスタを整え、毎月の集計とレセプトの照合を習慣にしておけば、施設基準の確認にも使える基礎データになります。
参考資料
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表(厚生労働省・2026年3月)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)医科点数表(厚生労働省・2026年3月、10月訂正反映)
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)(厚生労働省・2026年3月、10月訂正反映)
- 疑義解釈資料の送付について(その1)(厚生労働省保険局医療課・2026年3月)
- 疑義解釈資料の送付について(その4)(厚生労働省保険局医療課・2026年4月)
- 令和8年度診療報酬改定について(関係法令等)(厚生労働省・2026年)
本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

