在宅療養支援診療所と機能強化型の要件|令和8年改定後に事務が毎年やること

在宅療養支援診療所と機能強化型の要件|令和8年改定後に事務が毎年やること

在宅療養支援診療所(在支診)の届出は、往診料の加算、在宅ターミナルケア加算、在宅時医学総合管理料(在医総管)などの点数を左右します。一度届け出れば終わりではなく、緊急往診や看取りの実績、24時間体制の中身を保ち続けることが前提で、要件を満たさなくなれば変更の届出が必要です。

この記事では、在支診の事務長・医事担当の方に向けて、在支診と機能強化型の要件を整理したうえで、令和8年度(2026年度)改定で何が変わったか、そして毎年・毎月の実績管理で事務が何をすればよいかを、施設基準通知と疑義解釈に沿ってまとめます。

この記事でわかること

  • 在支診の類型(単独型機能強化型・連携型機能強化型・従来型)と主な要件の違い
  • 全ての在支診に共通する24時間体制などの要件
  • 令和8年度改定での変更点(連携型の細分化、第三者による体制の明確化、BCP、年1回報告の削除)
  • 緊急往診・看取りなどの実績の数え方
  • 事務の年間カレンダーと、要件を満たさなくなったときの対応

在支診の類型と主な要件

特掲診療料の施設基準通知(第9)では、在支診を次の類型に分けています。このうち単独型機能強化型と連携型機能強化型の「ア」が、往診料の加算や在医総管などで点数の高い「在宅療養支援診療所であって別に厚生労働大臣が定めるもの」(いわゆる機能強化型)に当たります。

  • 単独型機能強化型(第9の1の(1)):自院単独で要件を満たす
  • 連携型機能強化型ア(第9の1の(2)のア):10未満の医療機関で連携体制を組み、さらに自院の医師による連続24時間の往診体制を月4回以上確保する
  • 連携型機能強化型イ(第9の1の(2)のイ):アの自院往診体制以外の要件を満たす。点数は在支診(従来型)としての点数
  • 従来型(第9の1の(3)):24時間体制等の基本要件を満たす
主な要件 単独型機能強化型 連携型機能強化型(ア) 従来型
在宅医療を担当する常勤医師 3名以上 連携内で3名以上 在支診の基準としての人数の定めなし
過去1年間の緊急往診 10件以上 連携内で10件以上かつ自院で4件以上 定めなし
過去1年間の看取り等 看取り4件以上、または超・準超重症児の在宅医療4件以上 連携内で看取り4件以上、かつ自院で看取りまたは超・準超重症児が2件以上 定めなし
24時間往診体制 自院 連携内で確保し、自院の医師による連続24時間の体制を月4回以上 自院または他の医療機関との連携
連携内のカンファレンス ― 月1回以上の定期的なカンファレンス ―
在宅データ提出加算 各年度5〜7月の訪問診療が2,100回を超えた場合、次年の1月までに届出 定めなし

連携型のアの「自院の医師」には、往診担当日の前日までに自院の診療録を閲覧でき、患者の診療方針を訪問診療の医師と共有している、自院からの往診経験が10回以上ある往診担当医も含まれます。なお、アが連携型機能強化型の基準を満たすために、連携相手はアでもイでも構わないとされています(改定概要資料)。

全ての在支診に共通する要件

類型を問わず、在支診には次のような体制が求められます。施設基準通知の文言を、事務が点検しやすい形に整理しました。

  • 24時間の連絡体制:24時間連絡を受ける保険医または看護職員を指定し、連絡先や緊急時の注意事項を事前に説明して文書で渡す。曜日・時間帯で担当が変わる場合はそれぞれ明示する。コールセンター等が連絡先を担う場合は事前に説明し、医療機関が24時間連絡を受ける体制を確保する。
  • 24時間の往診体制:往診担当医の氏名・担当日等を文書で患家に提供する。やむを得ず事前に氏名を伝えていない往診医は、往診日以前に在宅医療担当の常勤医師と面談して診療方針を共有した医師に限り、常時1人以下とする。
  • 24時間の訪問看護体制:自院または連携先の看護師等による体制を確保し、担当者の氏名・担当日等を文書で提供する。
  • 緊急時の入院体制:緊急時に入院できる病床を確保し、受入医療機関の名称等をあらかじめ地方厚生局に届け出る。
  • 情報提供と記録:連携先に診療情報を文書で随時提供する。診療記録管理の体制を整える。連携調整担当者と連携する。
  • 意思決定支援の指針:「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた指針を作成する。
  • 業務継続計画(BCP):策定し、定期的に見直す(令和8年改定で追加)。
  • 期限付き指定でないこと:外来医師過多区域で要請に応じず、保険医療機関の指定に3年以内の期限が付された診療所でないこと(令和8年改定で追加)。
  • 望ましいとされる事項:訪問栄養食事指導を行える体制、介護保険施設から求められた場合に協力医療機関となることなど。

また、直近1か月の患者のうち往診・訪問診療を行った患者の割合が9割5分以上の医療機関は、直近1年間に5つ以上の医療機関から紹介を受けて訪問診療を開始した実績、看取り20件以上または重症児10件以上、在医総管・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)を算定した患者のうち施設総管の患者割合7割以下、要介護3以上等の患者割合5割以上といった追加要件を満たす必要があります。

令和8年度改定で変わったこと

連携型機能強化型の細分化

連携型がアとイに分かれ、機能強化型の点数を算定できるのはアだけになりました。アは施設基準通知の表1(新設)に掲げられ、届出が必要です。

第三者を使う24時間体制の明確化

疑義解釈では、往診担当医の氏名を伏せた説明は認められず、雇用契約のない医師を患家への文書に載せることも認められないとされました(その2)。面談は往診担当日の前日以前に、対面の面談か、医療機関が開催・参画するカンファレンスへの対面出席で行います(その2)。対面の面談計画を文書で定めている場合は2026年12月31日まで体制を満たすものとされ、2027年1月1日以降は対面で面談した医師に限られます(その4)。往診予定の医師の急病など緊急時の例外は6か月間に10日が上限です(その4)。研修のため雇用契約のない研修医等が往診に従事する場合は、その旨を患家への文書に記載するなどして事前に説明します(その4)。

BCPの追加と経過措置

2026年3月31日時点で届出済みの在支診は、2027年5月31日まではBCPの要件を満たすものとみなされます。施設基準通知の表2では、在支診(連携型機能強化型アを除く)は「2027年6月1日以降に引き続き届け出る場合に限る」として届出が必要な項目に掲げられています。疑義解釈(その12)では、日本医師会の「診療所用業務継続計画(BCP)のひな形」を参考にしてもよいが、医療機関や地域の特性、市町村の個別避難計画等を踏まえて追加・削除し、職員に周知し、定期的に更新することが望ましいとされています。

年1回の看取り数等の報告を削除

改定前は、年に1回、在宅看取り数や地域ケア会議等への出席状況を様式11の3で地方厚生局に報告する要件がありました。改定概要資料では、業務の簡素化のためこの要件を削除したことが示されており、改定後の施設基準通知の第9にもこの規定はありません。

実績の数え方

  • 緊急の往診:往診料の注1に規定する、緊急または夜間・深夜・休日に行う往診です。定期の訪問診療は含みません。
  • 在宅での看取り:在宅で看取った件数です。あらかじめ聴取した患者・家族の意向に基づき、緊急時の受入医療機関で7日以内の入院を経て死亡した患者で、入院日を含む直近6月間に自院が訪問診療(訪問診療料(Ⅰ)の1、(Ⅱ)のイ、または在宅がん医療総合診療料)を行っていた場合も含められます。
  • 超・準超重症児の在宅医療:15歳未満の超重症児・準超重症児で、3回以上の定期的な訪問診療を行い、在医総管または施設総管を算定している場合に限ります。
  • 期間:「過去1年間」は届出の時点や確認の時点から遡る期間です。毎月、直近12か月の累計を更新しておくと、要件割れの兆しに早く気づけます。

従来型の在支診には、実績に応じた在宅療養実績加算があります。実績加算1は過去1年間の緊急往診10件以上かつ看取り4件以上、実績加算2は緊急往診4件以上かつ看取り2件以上に加え、緩和ケアに関する研修を修了した常勤医師が在宅医療を担当していることが要件です。実績の集計は、機能強化型の要件確認と同じ台帳で管理できます。

要件割れの影響の例:機能強化型(病床なし)の在支診が従来型の扱いになると、在医総管(月2回以上、単一建物診療患者1人)は4,085点から3,685点に、往診料の緊急往診加算(別に厚生労働大臣が定める患者)は750点から650点になります(いずれも2026年6月以降の告示の点数)。在宅ターミナルケア加算も機能強化型の区分では算定できなくなります。

事務の年間カレンダー

時期 やること 主な根拠
毎月 緊急往診・看取り等の件数を台帳に記録し、直近12か月の累計を更新。連携型は月1回以上のカンファレンスの記録、アは自院の連続24時間往診体制(月4回以上)の記録 施設基準通知 第9
変更が生じたとき 常勤医師の異動、連携先・受入医療機関の変更、類型の変更があれば変更の届出 施設基準通知 第3
2月・5月・8月・11月 在医総管の注14・注16の基準を確認し、変更があれば同月中に様式19で届出 施設基準通知 第15
5〜7月 訪問診療回数を集計。機能強化型で2,100回を超えた場合は次年の1月までに在宅データ提出加算を届出 施設基準通知 第9
8月 8月1日現在の届出基準への適合性を確認して報告(定例報告)。2026年8月は在医総管の注16の確認結果を全ての届出医療機関が報告 施設基準通知 第3・第15
2026年12月31日 事前に氏名を伝えていない往診医について、計画による猶予の期限。以降は対面で面談済みの医師に限る 疑義解釈その4
2027年5月31日 BCPの経過措置の期限。6月1日以降も届け出る場合は届出 経過措置・施設基準通知 表2
定期的に BCPの見直し、患家に渡す24時間体制の文書の更新 施設基準通知 第9

定例報告の対象となる施設基準や様式は、地方厚生局が毎年案内します。たとえば近畿厚生局の令和8年度の医科の定例報告の案内では、報告対象ではなくなった施設基準の例として在宅療養支援診療所が挙げられ、在医総管等については注16の確認に関する様式が示されていました。管轄の厚生局の案内を毎年確認し、何を提出したかを記録しておきましょう。

要件を満たさなくなったときの対応

施設基準通知の第3では、届出の内容と異なる事情が生じて施設基準を満たさなくなった場合や届出区分が変わる場合は、その事情が生じた日の属する月の翌月に変更の届出を行うとされています。常勤職員の配置要件だけの変更など、月単位で算出する数値を用いない要件の場合は、満たさなくなった月に速やかに届け出て、翌月から変更後の点数で算定します。

実務では、次の順で動くと混乱が少なくなります。

  1. 台帳で、どの要件をいつから満たさなくなるかを特定する(緊急往診の累計、常勤医の退職日など)
  2. 変更後の類型(機能強化型から従来型など)と、影響する点数を整理する
  3. 様式11(在支診)、様式11の3(機能強化型・在宅医療充実体制加算の実績)、様式11の5(在宅療養実績加算)など必要な様式を準備する
  4. レセコンの施設基準設定を変更する月を決め、院内に周知する
  5. 連携型の場合は、連携先の医療機関にも影響を伝える

届出を受理した医療機関には、地方厚生局による適時調査も行われます。届出時の根拠資料(実績の台帳、患家への文書の控え、面談記録、BCP)は、すぐに出せる場所にまとめておくと安心です。

在支診の運用チェックリスト

  • 自院の類型(単独型・連携型ア・連携型イ・従来型)と、レセコンの施設基準設定が一致しているか
  • 緊急往診・看取り・超・準超重症児の件数を毎月台帳に記録し、直近12か月の累計を見ているか
  • 患家に渡す24時間体制の文書に、連絡担当者、往診担当医、訪問看護担当者の氏名・担当日が正しく載っているか
  • コールセンター等を使う場合、患家への事前説明と、医療機関が24時間連絡を受ける体制があるか
  • 事前に氏名を伝えていない往診医の面談記録があり、常時1人以下になっているか
  • そうした往診医が往診した場合、往診日と医師名を摘要欄に記載しているか
  • 連携型の場合、月1回以上のカンファレンスの記録があるか。アの場合、自院の連続24時間往診体制の実績を記録しているか
  • 緊急時の受入医療機関に変更がないか
  • BCPを策定し、見直しの時期と2027年6月以降の届出の要否を管理しているか
  • 意思決定支援の指針を作成し、内容を職員が把握しているか

よくある質問

Q. 毎年提出していた在支診の実績報告はなくなったのですか?

A. 在宅看取り数や地域ケア会議等への出席状況を年1回報告する要件は、令和8年度改定で削除されました。一方で、施設基準を届け出た医療機関が毎年8月1日現在で適合性を確認して報告する仕組み(定例報告)は施設基準通知に残っています。どの施設基準が報告対象になるかは厚生局の案内で毎年確認してください。実績の報告がなくなっても、届出の要件として実績を満たし続ける必要がある点は変わりません。

Q. 緊急往診の件数が年度の途中で基準を下回りそうです。

A. 実績は「過去1年間」で判断されます。直近12か月の累計が基準を下回ることが確定した場合は、施設基準通知に従って変更の届出を行います。点数が変わる月を早めに把握し、レセコンの設定変更と院内周知の準備をしておくことが大切です。

Q. BCPは決まった様式で作る必要がありますか?

A. 施設基準通知では「BCP策定の手引き」(厚生労働省の在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業専門家委員会作成)等を参考にすることとされ、疑義解釈(その12)では日本医師会の診療所用ひな形を参考にしてもよいとされています。いずれの場合も、自院や地域の特性に合わせて内容を調整し、職員に周知することが求められています。

Q. 夜間の電話をコールセンターに任せることはできますか?

A. 患家に提供する連絡先をコールセンター等が担う場合は、その旨をあらかじめ患者・家族に説明し、医療機関がコールセンター等からの連絡を24時間受ける体制を確保することが要件とされています。

Q. 連携型のカンファレンスはオンラインでもよいですか?

A. 疑義解釈(その4)で、オンライン会議を併用してよいとされました。ただし、連携に新たな医療機関が参加する場合は、対面でカンファレンスを開くか、新たに参加する医療機関の常勤医師が他の医療機関の常勤医師と対面で面談し、連携のあり方や診療方針を共有しておくこととされています。

まとめ

在支診の要件は、24時間の連絡・往診・訪問看護・入院の体制を中心に、機能強化型では常勤医師数と緊急往診・看取りの実績が加わる構造です。令和8年度改定では、連携型機能強化型が自院の往診体制で区分され、第三者を使う体制の要件が明確になり、BCPが加わる一方、年1回の看取り数等の報告はなくなりました。報告が減った分、事務に求められるのは、実績と体制を毎月記録し、要件割れの兆しに早く気づける台帳を持つことです。経過措置の期限(2026年12月31日、2027年5月31日)も年間カレンダーに入れておきましょう。

参考資料

本記事は2026年10月時点で公表されている資料をもとに作成しています。算定の可否は個別の状況で異なるため、最終的には告示・通知・疑義解釈や、管轄の地方厚生局・保険者にご確認ください。

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